8/29の中越市民防災安全大学の講座について。
一週間遅れの報告になってしまいました。
表題「災害情報はどうあるべきか?~情報が生死を分ける時代に~」
講師:ジャーナリスト・吉村氏
●「下水道に鉄砲水」
・08年8月5日 午前中,東京豊島区
・作業員5人が犠牲に
・周辺に集中豪雨(66mm/h)
・警報は約1時間後
東京の排水能力・下水処理能力は1時間に45ミリ~50ミリまで。
それを超えるとあふれて、あふれた雨は地下へ行く。
東京都内で一番危険な場所は東京駅八重洲の地下駐車場。
洪水被害の時には地下駐車場で死亡する被害が発生するであろう。
●「増える集中豪雨」
気象庁の統計によれば、時間雨量50ミリ以上の雨の回数は、1977年~86年:200回,1987年~96年:230回,1997年~06年:300回と増えてきている。
この原因は、「気象温暖化」と「ヒートアイランド現象」。
日本は、すでに亜熱帯に近い気候になっている。
その現象の象徴的な話として紹介されたのが「お米」の話。
いまや魚沼産のお米より北海道産のお米ほうが高く評価され始めているらしい。
新潟がパイナップルの産地になる日が来る!?
人々は湿気が多くなるとイライラしやすい。
犯罪が起きやすい。
秋葉原が起きた事件のあの日と同じ日に池田小学校の事件は起きている。
昔は気象庁は不快指数というものを発表していた。(80%を過ぎると、ほとんどの人がイライラ)
ところがいつのまにか、その数値の発表を止めた。
なぜか?…それは抗議の電話があったから「不快指数を発表されただけで不快になる」と。
●「安全」の定義
・そもそも「安全」は存在しない。
・常に存在するのは「危険」である。
・危険を如何に的確に予測し、確実に防止するのかが重要である。
・安全とは一人一人が力を合わせて作り出すものである。
(黒田 勲氏語録を引用)
●「岩手・宮城内陸地震」
・地盤災害
・風評被害に悩む観光地
・目立つ土砂災害
東京の人間は地震というと火災を連想するが、それは二次災害。
地震災害とは本来、土砂災害のこと。
これからの地震は、中山間地で多く起こるであろう。
中山間地を見捨てれば、都市に影響が及ぶ。
●「中山間地の防災・減災」
・進む過疎・高齢化・防災共助・防災力の低下
・森林管理など耐力の低下
→人的被害が発生しやすい。
しかも孤立化しやすい。孤立化から廃村へ。
水源部(農地・森林)の管理放棄へ
限界集落。
都市に対して大変なダメージ。
中山間地の防災減災には、国がお金を出して廃村・孤立させないことが大事なのではないか。
●「中国四川省で巨大地震」
・08年5月12日 午後2時28分。
なぜ被害が拡大したのか?
・予想外の巨大地震 阪神大震災の32倍
・山間・貧困地域を直撃
・耐震性の低い建造物
・進まぬ砂防対策
・通信 交通インフラが途絶 救援の手も届かず。
地震の被害は発生時間に左右される。
関東大震災、一つ前の関東大震災は夜中だったので、被害者数が全然少ない。
犠牲者は8万人を超えるのではないかと言われている都会直下型の東海地震などでも、
深夜におこれば被害が少ない、時間が悪ければ10万人は死ぬだろう。
中国の土木建築物の耐震性は無きに等しいと言っても過言ではない。
思えば、今から30年くらい前の北京は素晴らしいところだった。
朝から澄み渡った青空の下を自転車がわんさか走っている町だった。
ところが、今の北京の空は朝でもどんよりで、自転車に代わって自動車の姿ばかり。
そして、そそり立つ高層ビル。
「日本は活断層のありかを公表しているようだが、なぜ公表しているの?」とある中国の地震学者。
中国でそんなことをしたら大変。社会不安で暴動が起こるかも!?だから活断層のありかを公表するなんて絶対ダメ、と発言されておられたらしい。
また、その方によれば、北京は活断層だらけで、もしも大地震が起きたら高層ビルはたぶん全部ダメでしょう、とのこと…恐ろしいですね。
中国の地方都市の建物の耐震性は極めて低い。
土木構造物、インフラ、建築物:耐震性を高めるにはお金がかかる。
しかし、14億人が暮らすために「高度経済成長」が優先。
結果として、お金を、建物の耐震性強化に回すのは後回しにされているようだ。
四川省~雲南省辺りは、インドオーストラシアプレートとユーラシアプレートのぶつかる場所で世界一の直下型地震頻発地域にある。
その象徴はヒマラヤ山脈。
1960年代、中国の河北で地震が活発化。
その際に、地震の起きる数日前から動物が騒いだりといった「宏観現象」が起こり、「これはおかしい。何かが異常事態が起こるに違いない」と10万人に避難指示を出したことがあるらしい。
結果、その地に大地震が起こり、町が崩壊する中でも、多くの人が被災を免れた。
10万人が救われたのである。
これが、世界で最初に、地震予知に成功した事例。
以来、中国は「地震は予知できる」という姿勢を前面に出してきたが、その後の予知は失敗続き。
中でも「唐山地震」の被害は最悪で、公称は死者20万人ということになっているが、実際には60万人くらいが死んでいるのではないかと考えられている。
四川省の地震で倒壊した学校では、以前から「学校内で走ったり、飛び跳ねたりするな」と指導されていたというのは有名な話。
倒壊した学校の様子を写した画像を見てみると、崩れずに残った箇所の境目には黒板があったことが分かった。これは黒板がすじかいの役目を果たし、そこが崩れずに残ったということ。
学校でさえも「おから工法」だったということか!?
阪神淡路大震災でも、一階が駐車場というビルの被害が大きかった。
地震は必ず前兆がある、かならず予知できる、人は地震に勝てる。
これが中国の地震対策だが、地震予知は未だ研究途上にある。
しかし、そもそも中国において地震予知は可能なのだろうか?
東西5,000㎞、南北4,000㎞の広大な国土の地震予知とは、どのようなものなのだろうか?
想像も付かない。
●「緊急援助のあり方」
・出遅れ、調整の失敗(派遣要請主義の限界)
・救助隊チームは「都市型地震」が前提、だから活躍の場がなかった。
・医療チームは、現場治療が前提。
中国は北京五輪後に最大の試練を迎えるだろうと、世界では言われている。
シャロンストーンがカンヌ映画祭で、大地震はチベット弾圧の報いと発言したところ、
物議をかもしたことは記憶に新しい。
王道にそむいた為政者は天の裁きを受けるといった災害天譴論(てんけんろん)に基づいた発言らしい。
実は、関東大震災の時にも天譴論争はあった。
渋沢栄一、内村鑑三らが「第一次世界停戦後の贅沢、自由放縦に対する天罰」と喧伝。
●「一流企業を日本病が汚染」
・バブル破綻後の営業優先主義 効率主義の優先
・安全に対する感性の衰退・想像力の欠如
これらが「日本病」
どこを見ても日本病が蔓延しているのでは。
●「組織事故の概念」
今一番大事な災害情報は、被害を起こさないための情報。
先日、栃木県で、豪雨のため冠水した市道で、女性が軽乗用車に閉じ込められて水死した事故があったが、これはまさに象徴的な出来事。
災害というものはどういうものなのかを一人一人が認識し、情報の在り方そのものを問わなければいけない時期に来ているのではないか。