私たちが口にする加工食品の多くに含まれている食品添加物。有益なものもある一方、免疫力を低下させたり、発がん性が疑われたりと、なるべく避けたいものも含まれている。食品表示から危険な添加物を自力で見分ける方法を身につけたい。
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スーパーやコンビニに行けば、弁当や総菜、パンにカップ麺、各種飲料などの加工食品があふれている。表示ラベルには肉や魚、野菜、砂糖など原材料とともに、保存料や着色料、甘味料などの名前が記され、ほとんどの商品に食品添加物が含まれていることがわかる。
現在、厚生労働省が認可している食品添加物は829品目。うち、化学合成された物質である「指定添加物(一部に天然由来のものも)」が472品目、天然由来の「既存添加物」が357品目ある。だが、ラベルで物質名を見ても一般にはなじみのない名称が並ぶ。中には、動物実験などで安全性について疑問が指摘されているものもある。私たち消費者は“危ない食品添加物”をどう見分ければいいのだろうか。
『最新版 食品添加物ハンドブック』(ビジネス社)などの著者で、科学ジャーナリストの渡辺雄二氏がこう解説する。
「特に安全性に問題があるのは、指定添加物の一部。自然界に存在しない化学合成物質のため体内に入っても分解されにくく、蓄積されるものもあります。けれども、添加物はあまりにも広範に使われており、完全に回避するのは難しい。特に危険な添加物をなるべくとらないようにすることが現実的です。ポイントは2点。いまコロナ禍ですから免疫力を下げるものと、発がん性の疑いがあるものを避けることです」
それでは、特に危険とされる食品添加物について検証していきたい。
「糖質オフ」「カロリーゼロ」をうたう飲料には、糖類の代わりに人工甘味料のアセスルファムK(カリウム)やスクラロースが添加されているものがある。そのリスクを渡辺氏が説明する。
「アセスルファムKを含む餌をイヌに2年間食べさせた実験では、ウイルスや細菌を攻撃する白血球の一種であるリンパ球が減少し、肝機能障害を示すALT(GPT)の値が上昇しました。スクラロースも動物実験で、リンパ組織にダメージを与えることがわかっています。つまり、人工甘味料を日常的に摂取すると、免疫力が低下する可能性があるのです。人工甘味料は安定した物質で腐らない。メーカーとしては使いやすいのでしょう」
カロリーゼロにもかかわらず人工甘味料をとり続けているとかえって太るという指摘がある。アセスルファムKは砂糖の200倍、スクラロースは600倍の甘味がある。元ハーバード大学研究員で、米ボストン在住の大西睦子医師が語る。
「多くの疫学研究で、ゼロカロリーのダイエット飲料を飲んでいる人は肥満や糖尿病になりやすいことがわかっています。人工甘味料はコカイン以上の依存性があるともいわれ、甘味に鈍感になって他の食べ物もどんどん甘くしないと物足りなくなってしまうのです。米国では肥満体形の人がダイエットコーラを飲んでいる光景をよく目にします。腸内細菌に影響するとの研究もあるので、習慣的にとらないようにしてほしい」
人工甘味料は缶コーヒーや炭酸飲料、スポーツドリンク、缶チューハイなどの飲料ばかりでなく、菓子や梅干し、カレールー、ドレッシングなど多くの食品にも使われているので、きちんと表示をチェックしたい。
ハムやベーコン、ウィンナーソーセージなど加工肉は発色剤として亜硝酸Na(ナトリウム)が使われている。肉をきれいなピンク色に保ち、腐りにくくする効果がある。
「亜硝酸Naは毒性が強く、肉に含まれるアミンという物質と胃の中で結びついてニトロソアミン類という非常に強い発がん性物質に変化します。お弁当やサンドイッチでもハムやウィンナーが入っている商品は控えたほうがいい」(渡辺氏)
2015年10月にはWHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)が、約800本の研究論文から、加工肉の消費量と発がん性を総合的に評価している。その結果、加工肉を毎日50グラム食べると大腸がんになるリスクが18%高まると発表した。
発色剤不使用の「無塩せき」のハムやウィンナーも売られている。一般的な商品より値段は高めだが、危険な添加物を避けることができる。
1970年代から「無塩せきハム」を販売している信州ハム(本社・長野県上田市)の担当者に話を聞いた。
「東京の消費者団体の要望で開発を始めたのがきっかけでした。当時は食の安全性について注目度は高くなく、色が悪くて高い商品は売れませんでした。それでも販売をやめずに続けてきたのは、先代社長の『いつか食の安全志向の時代が来る』という判断があったからです」(企画販促課)
同社では食肉を加熱する際に、空気中にある微量の亜硝酸と結合させる技術を開発し、うっすらと発色できるようになった。ハムを結着させるのも合成添加物ではなく、卵などの天然由来の成分を使っているという。
亜硝酸Naは、たらこや明太子などの魚卵にもよく使われているので要注意だが、近年ではコンビニでも発色剤不使用のいくらや明太子を具材にしたおにぎり、スパゲティなどが売られるようになった。表示に注目すれば、安心・安全な商品を選ぶことができるのだ。
発がん性などの疑いがあるタール色素は、食品添加物として日本では12品目の使用が認められている。福神漬けやかまぼこ、赤ウィンナーなどの着色に使われる。大西医師がこう指摘する。
「日本で認可されている12品目のうち、米国では赤色の2号、102号、104号、105号、106号の5品目の使用が禁止されています。タール色素はすべて石油からつくられますが、特に子どもに悪影響があるとされ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの行動障害に関係するとの報告もあります。本当に必要な添加物なのか見直さなければならないでしょう」
そのうえで、大西医師はこう警鐘を鳴らす。
「複数の添加物が体内で相互作用して、どんな化学反応を起こすのかはまったく検証できません。添加物のデメリットに、もっと目を向ける必要があります」
輸入オレンジやレモン、グレープフルーツは船で何週間もかけて日本に運ばれるため、腐ったりカビが生えたりするのを防ぐ目的でOPPやイマザリルなどの防カビ剤が使われている。このほか、新しく認可された防カビ剤に、アゾキシストロビン、ピリメタニル、フルジオキソニル、プロピコナゾールの4種類があるが、もともとすべて農薬。発がん性の疑いが指摘されているので、これらも避けたほうがよさそうだ。
食品表示法では添加物は物質名表示が原則だが、実際には抜け穴があり、「香料」や「酸味料」といった一括名表示が認められているものもある。
「一括名表示が認められている添加物は全般的に毒性の低いものが多いが、香料の中には毒性の強いものもあって、サリチル酸メチルという香料を2%含めた餌をラットに食べさせた実験では、49週ですべて死亡している。香料メーカーは秘密体質で、取引している大手食品メーカーでさえ、どんな品目が使われているのかわかっていないこともあるのです」(渡辺氏)
食品添加物の実態はまだまだブラックボックスだが、消費者の意識と行動で変えていくしかない。表示を見ることは、その第一歩になるはずだ。(本誌・亀井洋志)