県は3日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所で事故が発生した際の広域避難のための行動指針を公表した。同日開かれた県防災会議原子力防災部会に提示した県地域防災計画(原子力災害対策編)の修正案に基づくもので、県内の避難先として3方面を設定するなどの概要を盛り込んだ。今後、国や市町村との協議を経て充実を図り、市町村の避難計画策定で参考にしてもらう考えだ。
指針ではまず、国の指針にのっとり原発から約5キロ圏内となる柏崎市の一部と刈羽村全域を即時避難区域(PAZ)に設定。約5~30キロ圏内の8市町も避難準備区域(UPZ)とし、事故時のそれぞれの対応を掲げた。
PAZでは、放射性物質の放出前に避難を始め、最も深刻な「全面緊急事態」では避難と同時に、甲状腺被曝(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤を服用する。UPZは全面緊急事態で屋内退避を実施し、放射性物質の飛散状況などによって地域ごとに避難に切り替える。
避難先はUPZの外側とし、県内では「新潟・村上」「魚沼・湯沢」「糸魚川・妙高」の3方面を設定した。自治体別に数パターンの避難の方面、経路を明示しており、柏崎市と刈羽村の避難先は50キロ圏外の村上市、糸魚川市などとした。
避難者の体に放射性物質が付着していないかどうかを調べる検査の拠点はUPZの外側に設けることも明記。ヨウ素剤もPAZ内への事前配布を原則とした。
福島第一原発事故を踏まえ、県と市町村は2012年11月から避難の詳細を10項目にわたって議論してきており、指針は、現時点で合意に至った項目のみをまとめた「概要版」だ。
柏崎刈羽原発の安全確保について助言する県技術委員会では、具体的な避難計画の策定に向けて、設置が進むフィルター付き排気設備の性能などについて議論する予定で、今後は県と市町村に東電を加えたすり合わせが必須となる。
泉田知事が国に要望した放射性物質拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」の住民への情報提供の方法や、複合災害に対する組織態勢の構築などの面でも課題が残る。
この日の議論でも委員から「住民がしっかりした意識を持たなければ実現されない」などの指摘が出た。飯沼克英・県危機管理監も会議終了後、「指針はまだよちよち歩きのもの。避難計画につながるように議論を進めたい」と語った。










