ネット上にアップされたいじめの映像、デマや個人情報などは、そのサイトから消すことができても永久に消し去ることは不可能だ。「ネットいじめ」の深刻な現状について、この問題に取り組んでいる、山形大学准教授・加納寛子氏に話を伺った。
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一度、ネットにアップされた映像や情報は、キャッシュ(検索エンジンが検索結果表示用の索引を作るときに、サイトの各ページの内容を保存したもの)として残っていたり、ダウンロードして保存している人がいたりすれば、またネット上に出回る可能性があります。
たとえば個人の顔と、アダルトサイトなどから取ってきた裸の画像との合成写真(コラージュ)を、ネット上にアップしようと思えば、操作自体は簡単です。ですから、加害者はしばしば、自分がネットいじめをしたことを忘れてしまいます。しかし、被害者はおぞましい画像がいつかまた出回るかもしれないという不安から、一生逃れることができません。
ネット上のいじめ情報はどこまでも広がる可能性があるため、被害にあった子どもたちは「逃げ場がない」と感じてしまいます。一度悪口を書かれるくらいのことは誰にでもありえますが、半年も1年もネット上で誹謗(ひぼう)中傷され続けていれば、心身に大きなダメージを受けるのは当然です。
子どもたちは、ネットいじめがいけないということは百も承知です。それでも「簡単」で「おもしろい」からと、軽い気持ちでやってしまいます。いじめの書き込みに「ノリで」同調するだけでも、被害者を深く傷つけ、さらには加害者となってしまうのです。
子どもを加害者にしないためには、「ネットいじめはいけないよ」と伝えるだけでなく、ネット上でも相手の立場を考えて適切な発言ができるよう、根気よく学ばせることが必要です。中学生以上であれば、誰かを誹謗中傷したり個人情報を暴いたりすることは、れっきとした犯罪になることも伝えておくべきです。
http://news.goo.ne.jp/article/benesse/life/benesse-10972.html