「米国産のTボーンステーキ(T字形の骨が付いたままのビーフステーキ)を安全と言って子供に食べさせられますか?」-。先月、東京で開催されたBSE(牛海綿状脳症)対策見直しに関する一般向けの説明会では、輸入条件変更を不安に思う声も上がった。
◆TボーンもOK
日本は平成13年のBSE発生後、世界のどこの国もやっていない全頭検査を実施。さらに、牛肉のトレーサビリティー(履歴管理)を義務付けた。こうした対策をとったことで、「これまでの日本のBSE対策は世界一厳しく、そのおかげで牛肉の安全が保たれている」と今も思っている人は少なくない。
しかし、食の安全・安心財団理事長で倉敷芸術科学大学の唐木英明学長は「世界的に認められているBSEの安全対策は、特定危険部位(SRM)の除去と感染牛由来の肉骨粉を飼料として与えないことに尽きる。全頭検査は消費者の『安心』、トレーサビリティーは事故が起こったときに被害を最小限にとどめる効果はあるが、どちらも実施することで安全を担保するものではない」と指摘する。
今回のBSE対策の見直しで、米国・カナダからの輸入は従来の「20カ月」以下から「30カ月」以下が可能となり、これまで輸入ができなかったフランスも米国・カナダと同様に30カ月以下、オランダは12カ月以下の輸入がそれぞれ可能となった。また、SRMの対象部位が扁桃(へんとう)と回腸遠位部に限定され、従来の頭部(扁桃以外)と脊髄、脊柱が除外。これによって、これまで輸入できなかった米国産Tボーンステーキなど骨付きロインの輸入も復活する。
◆ふぐと同じ
月齢やSRMの変更は国産・輸入の両方にかかわる措置だが、変更への不安は主に米国産に向けられる。背景には、輸入量が多いことに加え、BSE発生後の輸入再開時、米国の禁止部位ではないが当時の日本では禁止部位だった脊柱が混入した牛肉が輸入されるなど、過去の対応への不信感があるようだ。
米国食肉輸出連合会シニアマーケティングディレクターの山庄司岳道さんは「訴訟社会の米国で食の安全対策を怠ることは企業にとって命取りでもある。また、米国では食肉処理場に農務省の検査官が常駐し、米国内向け・輸出向けともに安全性を厳しくチェックしている。安心して食べてほしい」。
また、唐木学長は「家畜の国際的な安全基準を決めるOIE(国際獣疫事務局)は、月齢に関係なくBSE感染牛でもSRMを取り去った肉は食べても大丈夫としている。毒の部分を除いて食べるふぐと同じ対応だ。もちろんリスクはゼロではないが、食の安全対策は科学的に決められていることを理解してほしい」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130222587.html