サラリーマンが加入する健康保険の財政が悪化し、保険料の上昇を招いている。高齢者医療への巨額の支出が原因だ。これ以上重い負担を現役世代に求めるのは避けるべきだ。
65歳以上の高齢者の医療費は、高齢者自身の保険料や窓口負担のほか、公費と健保組合などからの拠出金で賄われている。その拠出金が、2008年にスタートした高齢者医療制度で急増したため、多くの健保は赤字に転落した。
財政難から、健保は労使で負担する保険料を上げざるを得ない。中小企業の従業員が加入する協会けんぽでは従来の8・2%から10%に、大企業の健保組合も7%台から平均8・3%に上昇した。
団塊世代が今年から65歳にさしかかり、高齢者の医療費は今後さらに増えるだろう。保険料率は際限なく上昇する恐れがある。
企業経営の重荷になる上に、賃金の手取りが減り、景気や消費に悪影響を与えかねない。
それを防ぐには、高齢者にも応分の負担を求めざるを得まい。
70~74歳の医療費の窓口負担は法定では2割なのに、1割に抑えられている。75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度の導入に際し、当時の民主党の鳩山幹事長らが「うば捨て山」と酷評し、政争に利用したことの反動である。
費用の多くを現役世代が賄う制度であり、的外れの批判だったが、福田内閣は高齢者の反発を恐れ、70~74歳の負担を75歳以上並みに抑える特例措置をとった。
この特例を廃し、本来の2割負担に引き上げるべきだ。1割となっている75歳以上の窓口負担の引き上げも検討課題になろう。
重要なのは、増え続ける医療費の伸びを抑えることだ。
複数の病気を抱える高齢者は、多くの専門医にかかり、受診や検査、投薬の重複が目立つ。
各医療機関の患者情報を一元的に管理し、無駄をなくすべきだ。共通番号制度(マイナンバー)の導入を急いでもらいたい。様々な病気を診る「総合医」育成も、重複受診の解消に欠かせない。
価格の安いジェネリック医薬品(後発薬)の使用を原則とし、薬剤費の抑制を図る必要もある。
政権に復帰する自民、公明両党の公約には「小児医療費の無料化を検討」など医療費増大につながる内容が目についた。これでは制度の維持が困難にならないか。
高齢者人口の増加で、高齢者医療に公費投入を増やすのは不可避だろう。財源確保のため、消費増税を着実に進めねばならない。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/medical/20121224-567-OYT1T01032.html