インフルエンザとコロナに“同時感染”
ぐったりとした様子で体温を測る 15歳の少年。
示された数値は「39度7分」、40度に迫る高熱だ。
少年が苦しんでいたのは…
息子が“同時感染”した母親:
インフルエンザとコロナ、どちらも 陽性でした。まさか両方かかるとは。
新型コロナウイルスとインフルエンザが“ダブル流行”する中、現れ始めた同時感染。
川崎医科大学・中野貴司教授:
2つ病原体が検査で検出されるということは、少なくともその検査する検体をとった呼吸器(鼻・喉)の粘膜、その場ではウイルスは共存しているんだと思います。
この同時感染については、医師も分からないことが多いという。
川崎医科大学・中野貴司教授:
教科書とかにも、同時感染の症状っていうのは書いてないと思うんです。医師たちもですね、そんなに経験があるわけではないですので。
広がる兆しを見せる同時感染…。
その時、私たちの身に何が起こるのだろうか?
“同時感染した”善本考香さん:
全くもって(単独の)コロナよりも、相当辛いぞっていう
2人の患者を取材すると、そのリアルな症状が見えてきた。
増加する“同時感染”
東京消防庁の119番通報を受け付けるセンターでは、
ひっきりなしに通報が鳴り続けていた。
東京消防庁職員:
女性が「発熱」。
東京消防庁職員:
急病人、37.8度の発熱。
そこには、赤く染まった地図が…。
出動している救急車を示しているという。
東京消防庁警防部総合指令室・藤野祐三消防司令補:
東京23区の救急車のほとんどが、動き回っているっていう状況です。例年にはないぐらい、発熱の患者さんが多いっていうふうには感じます。
新型コロナの扱いがインフルエンザと同じ「5類」になって、
初めて迎えている感染の“第9波”。
その勢いは“第8波”のピークに迫ろうとしている。
一方、インフルエンザは冬からの流行が収束しないまま、
8月下旬から異例の増加を始めた。
こちらの小児科クリニックでは、16日…。
みわた小児科・三輪田博介院長:
今日は土曜日の半日診療だったんだけれど、インフルエンザが1人、コロナが2人、“同時感染”が2人です。
17日午前だけで、発熱外来に来た17人のうち2人が、
新型コロナとインフルエンザの同時感染。
その前日も、1人いたという。
みわた小児科・三輪田博介院長:
9月に入って学校が始まりましたね。集団生活始まって、感染が増えているかな。学級閉鎖なんかも多いんですけど、中高生に感染が増えているという印象です。
実際、高校1年生の息子が同時感染した母親に状況を聞くと…。
体調に異変が出始めたのは14日の木曜日。
息子が“同時感染”した母親:
体育祭があって、「大声出したから喉が痛い」って本人は言っていて。まさかコロナだったり、1ミリも疑がわないまま(翌日)金曜日の朝、学校行く前に体調が悪くなって、熱を測ったら38.6度。本当に発熱が急に来たみたいな。
学校に行くつもりだったが、突然、体温が跳ね上がったという。
そこで、発熱外来を受診すると…。
息子が“同時感染”した母親:
念のためにインフルエンザとコロナの両方検査をしましょうっていうので、そこで初めてどちらも陽性ですって。「そんなことあるんですか?」って言ったら、「稀にあるんです」って伺って。 検査結果を待ってる時も、息子はもう座り込んじゃっていたし、息をするのも苦しそうな感じでした。
帰宅後、息子を部屋に隔離。
処方されたインフルエンザの治療薬や解熱剤を飲むと、
午後7時に体温は37度6分に。
しかし、夜中になると、再び40度近くに。
母親:
39度を超えると、もう解熱剤を使わないのが怖いので、また下げて、行ったり来たりで。
体温自体は、きのう徐々に下がっていった。
その一方で、辛い症状が…。
母親:
喉の痛みが強いので、蜂蜜とレモンを希釈したものを飲んでいます。喉の痛みが、すごいひどくなってきてるみたいで、喉が一番どっちかっていうと辛そうです。なんか声出すのが嫌みたいで
そして、17日…。
母親:
36度5分!
体温は平熱に。それでも…。
母親:
喉は痛い?
息子:
うん(頷く)
長引いているという喉の痛み。
一方、別の症状に苦しめられた女性もいた。
“同時感染の方が辛い”
9月初旬に同時感染した善本考香(よしもと・としか)さん。
聞けば2年前、新型コロナに感染した際は、
中等症扱いで入院までしたという。
“同時感染した”善本考香さん:
1度目は中等症になったので、入院して、酸素ボンベとかで過ごしていたんです。このとき、熱も経験していますし、2度目は喉が痛いのが主だったんですよね。今回すごい苦しいなって感じました。ちょっとただ事ではないなっていう。
今回の同時感染の方が辛かったという。
そのワケは…。
“同時感染した”善本考香さん:
全く動くこともできなかったので、全然ご飯も食べられないし、起き上がることもできない状態だったんです。
動けないほどの倦怠感。
病院にも行けず、オンラインで受診したという。
数時間で薬が届き、38度台に上がった体温は下がり始めたというが…。
“同時感染した”善本考香さん:
節々の痛さと全身の倦怠感が、ちょっと今までに味わったことない倦怠感で、ボーとしてるって感じですね。思考能力がちょっと停止しちゃった感じがするような感じでした
そして今もまだ食欲は戻っていない状態だという。
善本さんを襲った強烈な倦怠感。
医師によれば、同時感染した他の患者もいるという。
みわた小児科・三輪田博介院長:
オミクロン以降ですね。コロナだけの患者さんっていうのは、あまり倦怠感を強く訴えてくる人は多くないかな。それから見ると、やっぱり同時感染の患者さんは、グタっとしてるなという印象もあります。
今後、さらに増えてくるとみられるコロナとインフルの同時感染。
医師も治療は手探りだというが、過度に恐れる必要はないという。
みわた小児科・三輪田博介院長:
幸いなことに、我々インフルエンザに対しては治療薬があるんですよ。それでスッと症状が取れていく。それはやっぱりインフルエンザがメインだったんだろうなっていうのはわかるんですけど、インフルエンザの治療を行ってもずっと症状が続くようでしたら、それはコロナがメインだったということだと思います。インフルエンザに関しては適切な時期に薬を投与すれば、かなり有効な治療法があるので、ダブル感染に関しても早めに受診をした方がいいと思います。
専門医に聞く“同時感染”への対処法
日本感染症学会専門医で川崎医科大学の中野貴司教授に話を聞いた。
――コロナとインフルの同時感染について。体の中で何が起こっているのか。
同時に感染することも稀にはあると思いますが、どちらかが先に感染して、少しの時間差で、もう一つに感染するということもあると思います。
――どちらか先に感染すると免疫力が下がって、もう一つにも感染するという可能性はあるか。
一つにかかると免疫が必ずしも下がるわけではないですけど、一つにかかってちょっと良くなった頃に、もう一つにかかるっていうこともあります。
――同時感染した人は当然、コロナもインフルについても、他の人にうつす可能性はあるか。
検査をした部位にウイルスが検出されるということですから、飛沫を浴びればかかる可能性はあると思います。
―― 感染した2人に話を伺ったら、どちらか一つに感染するよりも、同時に感染する方が症状が重いように見える。
1+1が2になったり、あるいは2以上になるかどうかはちょっとわからないですけども、一つの病気にかかるより症状が重かったり、あとダラダラとだるいとか、熱が続くケースはあると思いますね。
――子供の方が、同時感染にかかりやすいのか。
お子さんの方が免疫力が弱いですから、色んな感染症にかかりやすいです。 ですから、複数の病原体にかかる頻度は、大人より子供さんのほうが頻度は高いと思います。
――インフルエンザというと、冬に流行っているイメージがあるが、コロナの時には全く流行っていなかったので、多くの人が免疫もなくなっているか。
二年以上にわたってインフルエンザの大きな流行がなかったですから、インフルエンザの患者数が増えていると言いますけども、抵抗力をあんまり持たない人が集積していて、そこに病原体が入り込むと症状が出る方が目立つということだと思います。
――風邪なのかインフルなのかコロナなのかと言うところで、例えば、僕は38.5度熱が出たら、どうしたら良いか。
一番は体調が極めて悪くないかどうかということが大事だと思いますけども、あと検査をご自身でするにしても、医療機関に行くにしても、熱が出てすぐというよりは、半日とか一日ぐらいして行かれることをおすすめします。インフルエンザも初期だと、検査も陽性に出ないことがありますから、時間を見極めて検査をされてはいかがかと思います。
――解熱剤はすぐに飲んで良いか。
解熱薬は体を楽にする、症状を取るための薬ですから、熱が高くて辛ければ、使っていただいて構わないと思います。
ワクチンは同時に打っても良いか
――コロナとインフルは両方ワクチンを打っても良いのか。
新型コロナワクチンは、まだ使われだして歴史が浅いということで、他のワクチンとは2週間の間隔を空けることになっていますが、インフルエンザワクチンだけは例外で、インフルエンザワクチンとコロナワクチンは、同時でも打ってますし、どんな間隔でも打ってます。かかりつけ医と相談して、適切な時期に2つとも打っていただくことは可能です。
――小さなお子さんで、うまく自分の症状が伝えられないお子さんがかかった場合だが、やはり脱水症状が怖い。
普段と様子が違うっていうことに、注意していただきたいですが、子供さんは脱水になりやすいです。 水分が足らないと脱水になりやすいので、唇とか舌が乾いてるとか、泣いているのに涙が出ないとか、尿の回数や量が普段に比べて極端に減っている時は、脱水の兆候ですので、医療機関を受診していただきたいと思います。
――厚生労働省は15日、10月以降の新型コロナの医療体制について発表した。現在、全額を公費で賄ってきた治療薬は、医療費の窓口負担の割合に応じ上限3000円から9000円を患者が負担。また入院費補助は、月に最大2万円だったものが1万円に半減する。 こうなると、熱があっても受診を控えるっていう方も出てくると思うが。
感染症法上の位置づけの変更などに伴い、ある程度、変更していくことはもちろん必要だと思うんですが、必要な方には必要な医療が届くように制度は整備していかないといけないと思います。
(「Mr.サンデー」9月17日放送より)