急増する働き盛りの帯状疱疹 発症率約2倍に増加、予防接種が影響
ぴりぴりとした痛みとともに、発疹が帯状に広がる「帯状疱疹(ほうしん)」。過度なストレスや免疫力の低下により50代以上で発症する人が多いが、ここ数年は20~40代の患者が増えているという。
帯状疱疹の原因は、水ぼうそうを起こす水痘・帯状疱疹ウイルスだ。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内に潜伏し続ける。数十年後に上半身や顔などに帯状の赤い発疹や水ぶくれ、刺すような痛みが出る。80代までに、3人に1人が発症すると言われる。
国内では、1997年から宮崎県内の患者を対象にした大規模疫学調査「宮崎スタディ」が行われている。
担当する千里金蘭大の白木公康教授(ウイルス学)によると、調査開始以降、全ての世代で発症する人が増えており、97年から2020年の間に発症率は1・8倍に増えた。
最近は20~40代での増加が目立っており、13年までは1・2倍程度の増加で推移してきたのが、14年は1・3倍、20年は2・1倍と急激に増えている。21年以降の増加率は調査中だという。
背景には、子どもへの水痘ワクチンが14年に定期接種となったことがある。
ワクチンの効果で、水ぼうそうに感染する子どもが激減。子育て世代である20~40代が、子どものウイルスを介して免疫が活性化される「ブースター効果」が得られなくなったことが関係しているという。
ただ、子どもが水ぼうそうに感染しなければ潜伏するウイルスもなくなるため、将来、帯状疱疹を発症する人も激減する可能性がある。95年に水痘ワクチンが定期接種になった米国では、帯状疱疹の発症が減ったという報告がある。
白木教授によると、20~40代では、50代以上に比べれば、痛みが3カ月以上続く合併症が残るのはまれという。虫刺されとの鑑別法は、患部の周りに違和感や痛みがあるかどうかで、違和感などを感じる場合はすぐに皮膚科に行くことをすすめる。(米田悠一郎)
朝日新聞社