コンタクトレンズは、薬事法において高度管理医療機器に分類されており、製造販売をするためには厚生労働大臣の承認が必要です。一方、カラーコンタクトレンズはかつて、視力補正を目的としない(以下、「度なし」とする。)ものについては高度管理医療機器としての承認が不要でした。しかし、2006年2月、当センターが公表した「おしゃれ用カラーコンタクトレンズの安全性-視力補正を目的としないものを対象に-」を発端に、レンズの安全性等が問題視され、2009年11月から「度なし」のカラーコンタクトレンズも高度管理医療機器としての承認が必要となりました。
承認を受けたカラーコンタクトレンズは、2009年には10品目以下でしたが、2013年には300品目程度に増加し、カラーコンタクトレンズの使用者も増加していると考えられます。
PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、カラーコンタクトレンズに関する相談が2004年4月1日から2014年3月31日までの10年間で737件寄せられていますが、最近の5年間(2009~2013年度)では541件と近年相談件数が増加しています。
また、2012年に日本コンタクトレンズ学会が行ったカラーコンタクトレンズによる眼障害調査では、7月~9月の3カ月間に、カラーコンタクトレンズによる眼障害が395症例報告されています。中でも重篤と考えられる眼障害(角膜潰瘍(かいよう)、角膜浸潤)の割合は、公益社団法人日本眼科医会が行ったコンタクトレンズ全体の眼障害の調査結果よりも高く、この原因として、カラーコンタクトレンズは透明なコンタクトレンズに比べ酸素透過性が低い、着色部位により角膜や結膜を擦る可能性があるなど、レンズ自体の安全性の問題や、正しいケアが行われていないなどの使用方法の問題が挙げられていました。
そこで、カラーコンタクトレンズ17銘柄に、参考として日本で承認を受けていない個人輸入品3銘柄を加え、安全性や使用実態等を調べ消費者に情報提供することとしました。
なお、本テストは日本コンタクトレンズ学会、公益社団法人日本眼科医会との共同研究で実施しました。
主なテスト結果等
承認基準(物理的要求事項)に関する試験
- 直径を測定したところ、承認基準の表示の許容差を超えるものが17銘柄中2銘柄ありました。
- ベースカーブを測定したところ、承認基準の表示の許容差を超えるものが17銘柄中5銘柄ありました。
- 頂点屈折力(レンズの度数)を測定したところ、国内で承認されているものでは承認基準の表示の許容差を超えるものはありませんでしたが、個人輸入の3銘柄中2銘柄で表示との差が一定値を超えるものがありました。
- レンズの厚さは角膜に酸素を供給する酸素透過率に影響するため、参考までに測定したところ、レンズの中心部の厚さは銘柄間で最大2倍の差がありました。
着色状態の観察
- 着色部分がレンズ最表面に確認されたものが17銘柄中11銘柄ありましたが、このうち9銘柄の製造販売元等のホームページには着色部分がレンズ内部に埋め込まれている旨の広告表示がありました。
- レンズケアが必要な9銘柄のうち1銘柄でレンズケアによる色落ちがみられました。
カラーコンタクトレンズの眼に及ぼす影響
- カラーコンタクトレンズを8時間装用したときのコンタクトレンズ矯正視力は、通常使用している透明なコンタクトレンズの場合よりも16銘柄中12銘柄で低くなる傾向がみられました。
- 低含水性HEMA素材(ソフトコンタクトレンズ分類グループI)のレンズの短期装用により、常用レンズよりも角膜浮腫の程度が重くなる傾向がありました。
- 治療やコンタクトレンズの装用中止等の対応が必要な程度(エフロン分類グレード3、4)の角膜上皮障害が16銘柄中12銘柄、結膜上皮障害が16銘柄中13銘柄、輪部充血が16銘柄中10銘柄でみられることがありました。
- 1銘柄を除いて、角膜浮腫、角膜上皮障害、結膜上皮障害、輪部充血のいずれかの項目において治療やコンタクトレンズの装用中止等の対応が必要な程度(エフロン分類グレード3、4)の障害がみられることがありました。
- 治療やコンタクトレンズの装用中止等の対応が必要な程度(エフロン分類グレード3、4)の障害が起こっていても、痛みなどの自覚症状がない場合がありました。
- カラーコンタクトレンズの酸素透過率は、素材だけではなく、着色の範囲、着色方法、着色剤の種類なども影響しているものと推測されました。
表示
- 個人輸入の1銘柄で、送られてきた商品に銘柄名、販売者名、直径等が確認できませんでした。
- 繰り返し使用可能でレンズのケアが必要な9銘柄のうち、5銘柄で過酸化水素タイプの消毒剤が使用できない旨の表示がありました。
カラーコンタクトレンズの使用実態に関するアンケート調査(10歳代、20歳代)
- カラーコンタクトレンズの入手、購入先は、インターネット通販が39.2%と最も多く、特に10歳代では半数近くを占めていました。
- カラーコンタクトレンズを購入する際、43.5%が眼科を受診したことがなく、15.2%がレンズの種類を変更する際に眼科を受診していませんでした。さらに、10歳代ではこれらの割合が高くなっていました。
- カラーコンタクトレンズを購入する際、36.4%が「購入先から眼科を受診しているかの確認も、眼科の受診を勧められることもない」又は「覚えていない」と回答しました。
- 3カ月に1回以上の頻度で定期検査を受診している人は17.0%と少なく、「全く受けていない」と回答した人が30.6%もいました。
- 23.7%がカラーコンタクトレンズを使用していて、目の調子が悪くなったことがあると回答しましたが、そのうちの約半数はその際に眼科を受診していませんでした。
- 決められた期間内にレンズを交換しなかったり、夜寝るときにレンズをはずさないで寝てしまうことがあるなど、誤った使用方法をしている人が多数いました。
- 使用する度に消毒やこすり洗いをしない、レンズケースを定期的に交換しないなど、誤った方法でケアしている人が多数いました。
消費者へのアドバイス
- カラーコンタクトレンズにはレンズの品質が原因で透明なコンタクトレンズよりも眼障害を起こしやすいものがあることが分かりました。カラーコンタクトレンズを使用する場合には、リスクを十分に理解した上で、必ず眼科を受診し眼科医の処方に従ったレンズを選択するようにしましょう。
- カラーコンタクトレンズを使用していて目に異常を感じた場合には、直ちに使用をやめ、眼科を受診しましょう。また、目に異常を感じていなくても、必ず定期検査を受けるようにしましょう。
- レンズの使用期限を守りましょう。また、繰り返し使用ができるレンズは、レンズケアを毎回正しく行うようにしましょう。
- 今回、参考としてテストした個人輸入の3銘柄では、ベースカーブや直径が表示値から大きく外れているものがあったり、表示が全くないものもありました。個人輸入のカラーコンタクトレンズは、日本において安全性が確認されているわけではありませんので、安易に購入しないようにしましょう。
業界・事業者への要望
- 直径、ベースカーブにおいて、表示値からの許容差を超え、承認基準を満たしていないおそれのある銘柄がありました。品質管理の徹底や商品の改善を要望します。
- インターネットの着色部分に関する広告で、消費者に誤認を与えると思われる表現がみられました。また、添付文書の文字が著しく小さく、消費者に必要な情報が伝わりにくいと考えられる銘柄もありました。消費者に正しい情報を分かりやすく提供するよう要望します。
- 低含水性HEMA素材のグループIのカラーコンタクトレンズは、短期の装用でも眼障害を起こしやすい傾向がみられました。レンズ素材、厚さ、着色方法の変更等、眼障害を起こしにくい商品を開発するよう要望します。
- 消費者が適正にカラーコンタクトレンズを購入、使用できるよう、販売時に適切な情報提供や確認を行うよう要望します。
行政への要望
- 直径、ベースカーブにおいて、表示値からの差が大きく、承認基準を満たしていないおそれのある銘柄がありました。事業者に対し品質管理の徹底や商品の改善の指導を要望します。
- カラーコンタクトレンズには、透明なコンタクトレンズよりも短期の装用で眼障害を起こしやすい傾向がみられ、これはレンズの素材や着色状態に関係している可能性がありました。眼障害の原因についてさらなる調査を行い、必要に応じて承認基準を見直すなどの検討を行うよう要望します。
- 消費者がカラーコンタクトレンズを適正に購入、使用できるよう、事業者に対し販売時に適切な情報提供等を行うよう指導を要望します。
要望先
- 厚生労働省 医薬食品局 審査管理課 医療機器審査管理室
- 厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課
- 一般社団法人日本コンタクトレンズ協会
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 消費者庁 表示対策課
- 内閣府 消費者委員会事務局
- 文部科学省 スポーツ・青年局 学校健康教育課
- 厚生労働省 医薬食品局 安全対策課 安全使用推進室
- 日本コンタクトレンズ学会
- 公益社団法人日本眼科医会
- 公益財団法人日本眼科学会
- 日本眼感染症学会
- 公益社団法人日本通信販売協会
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
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