長岡技術科学大(長岡市上富岡町)の大学院に2012年4月に新設された「原子力システム安全工学専攻」(修士課程)の第一期生が今春、卒業する。在籍する15人の院生のうち進学などを除く、就職を希望した11人全員が原子力関連を含む企業などから内定を受けた。
同専攻は、原子力分野に「システム安全」の視点を取り入れ、原子力工学やシステム安全の専門知識に熟知した原子力技術者の育成を目指して設置された。
原子力安全系の系長小川徹教授によると、大学内の原子力関係の特別講義には他専攻の院生らも大勢受講に来て、原子力への関心は高いという。
しかし、同専攻の定員20人を満たしていない。現在国内の原発すべてが停止していることを受けて電力会社やプラント会社が採用枠を絞る傾向にある。「学生は就職にシビア。それだけに100%就職が決まり、よかった」
小川教授によると、内定の内訳は原子力関連の研究機関や大手プラント会社、電力会社に5人。予想をしていなかった外食産業に決まった院生もいた。福島第一原発の事故前には考えられなかった放射能に関する知識が食品にも必要とされたらしい。大手建設会社に決まった院生も原子力の知識が評価されたという。
一方で、原発事故などを想定した防災関係の面から自治体が原子力の知識をもつ学生の採用を増やすと見ていたが、期待ほどではなかったという。
小川教授は「原子力を学んだ学生の需要は手堅くある。(再稼働、廃炉の)どっちに進むにしても、将来を見据えて原子力技術者の人材を途切れさせないように安定して採用をしてほしい」と企業などに期待する。(泉野尚彦)