足の親指によく起こり、痛みを伴うこともある「巻き爪」。合わない靴を履いたために引き起こされることが多く、特に冬になると、スキーやスケートなどで硬い靴を履くことによって悪化、さらには爪が皮膚に刺さって炎症を起こす「陥入爪」にもなり病院を訪れる患者が増えるという。見過ごされがちな足の爪のトラブルだが、悪化すると歩行困難になるなど、生活の質(QOL)の低下につながりかねないだけに、注意が必要だ。
■江戸時代には少なかった
実は記者は、両足の親指の爪だけが湾曲していて巻き爪気味。爪を切りにくく、困っていた。気になって形成外科でみてもらったが、「治療するほどではない」と言われてそのまま放置。しかし、足先を家具にぶつけたとき、巻き爪気味だった親指だけ血が出て腫れてしまった。
「巻き爪の人は潜在的に多いのではないでしょうか。靴を履くという生活をしている現代人に特有のトラブル。江戸時代には少なかったでしょう」と話すのは、爪の変形などに詳しい、医誠会病院(大阪市東淀川区)の福田智・形成美容外科部長。「今は合わない靴を履いているせいで爪が変形したり、ストレスが多い時代のせいか必要以上に爪を切りすぎ深爪となり、それが原因で爪が皮膚に刺さったりして来院される人もいます」
深爪をすると、歩くたびに地面からの力で皮膚が爪の縁から持ち上げられ、爪を圧迫し、巻き爪になる。
「皮膚に刺さる爪を切ってしまえば一時的によくなる。しかし、手の爪は10日で1ミリ、足の爪は20日で1ミリ伸び、また痛みが出てくる。根本的に解決しない限り、その繰り返しになる」と福田医師。
■ワイヤー法とチューブ法
巻き爪や陥入爪の代表的な治療は、2通りあり、一つは「ワイヤー法」。爪の上部に平行に小さな穴を2つ開けて、そこへ形状記憶の細いワイヤを通す。ワイヤがまっすぐに戻ろうとする性質を利用し、爪が巻いてしまうのを防ぐ。1、2週間で巻き爪による痛みはほとんどなくなり、2、3カ月でワイヤを取るという。
もう一つは、「チューブ法」。深爪などで爪が皮膚に刺さって赤く腫れている場合などに選ぶ方法だ。シリコンを爪と皮膚の間にはさんで接着、外側に向けて爪に圧力をかける。1週間後には赤みも痛みもほとんどなくなり、3、4カ月後にはシリコンも除去する。
■軽度なら自宅で矯正も
軽度の巻き爪であれば、自宅でも爪の矯正ができる。福田医師に教えてもらったのは、「コットン・パッキング」という方法。
湯上がりなどで爪が柔らかくなっているときに、米粒くらいに丸めた乾いたコットンを、爪の両端に入れる。このとき、コットンを爪の内側のほうに重点的に詰めて、爪の内側から外側に向けて圧力がかかるようにするのがポイント。コットンは終日詰めたままにし、風呂に入るたびに交換する。
「爪を外側に広げるとともに、爪の土台になっている部分(爪床=そうしょう)を広くして爪が広がりやすくするのが狙い。3カ月ほどで効果が出るでしょう」
ただ、治療などで痛みは消えても、「同じ生活習慣を続けていれば、再発のおそれがある」と福田医師は警告する。「深爪をしない、先が細くてきついなど足形に合わない靴は履かない、など、巻き爪にならないような生活を送ることが大切です」と話している。
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巻き爪のケアや爪のカットなどを行うフットケアサロン「巻き爪ドットコム」(大阪市北区)で足をみてもらった。
「確かに病院での治療を必要とするほどではないけれど、軽度の巻き爪ですね」と代表の河野慎也さん。ドイツ製の小さな絆創膏型のグラスファイバー(長さ2センチ、幅3ミリ)を親指の表面に固定、爪の両端を軽く持ち上げたままの状態を保つ。強く踏み込んでも爪の存在が気にならず、しっかり歩けるような気がする。1カ月後に経過をみるという。
「その間に、地面を蹴るように歩き、かかとから着地するなど、歩き方を改善することなどで、再発する可能性は低くなりますよ」と河野さん。「爪のケアに無頓着な人が多い。たかが爪と思わず、関心をもってケアをしてほしい」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20131130550.html