ユズコショウは、爽やかなユズの香りにトウガラシのピリッとした辛さを合わせた調味料。
これからの季節、鍋物の薬味にもぴったりだ。ユズコショウ作りが盛んな大分県内の農園を訪ねた。
ユズコショウは九州各地で作られている。中でも大分は生産者が多く、「ユズコショウ発祥の地では」といわれることもある。山間部の農家では、古くから自生していたユズの実の皮を使って作っていた。いつ頃から誰が作り始めたのかは、はっきりしない。
10月上旬、同県内一のユズ産地・宇佐市の「くしの農園」を訪れた。険しい山道を登った段々畑。直径3~5センチほどの青いユズの実を、スタッフ数人が丁寧に収穫していた。
くしの農園では、市内3か所の畑に約1200本のユズの木を栽培し、ユズコショウを作っている。農園代表の櫛野正治さん(62)は「完熟する前の青い実のほうが香りがよい。今年は夏の天気がよかったので出来は上々」と話す。
収穫した青ユズは、近くの加工場に運び、皮を機械で薄くむき、粗く刻んで塩漬けにする。低温貯蔵倉庫に入れ数か月から半年ほどねかせる。
このユズの皮と合わせるのが青トウガラシ。九州ではトウガラシのことをコショウと呼ぶこともある。市内の農家で栽培したトウガラシを塩と一緒に機械で軽くかき混ぜる。こちらも低温貯蔵倉庫に半年ほど置き、さらに粗くすりつぶして半年以上おく。塩漬けすることで、とんがった辛さがまろやかになる。
こうしてねかせたユズとトウガラシを合わせ、石臼ですりつぶして風味を出せば、ユズコショウの出来上がり。混ぜ合わせる割合は業者ごとに異なる。くしの農園では「1対1程度」。出荷が増えるのは鍋物が始まる11月以降だ。
くしの農園のユズコショウを瓶から皿に少量出してもらった。ふわっと爽やかな香りが漂う。箸の先につけてなめてみると辛さや塩加減は少し控えめ。櫛野さん宅では、祖母の時代からすり鉢でユズコショウを作っていたそうだ。櫛野さんの妻由美子さん(62)は「我が家では農作業で忙しい時にはユズコショウのお茶漬け。ピリッとした辛さで食欲もわきます」と話す。
ユズコショウには、黄色のユズと赤トウガラシを合わせたものもある。
ユズコショウは何にでも合う。鍋物やうどんから、刺し身、焼き鳥まで。マヨネーズとも相性がよく、サラダにも使える。櫛野さんは、「ユズとトウガラシは絶妙の組み合わせ。そのまま酒の肴さかなにもなります」と勧める。冷蔵庫に1瓶、常備しておきたくなった。(小野仁)
◎ネットで紹介 くしの農園(0978・42・5650)は、ホームページ(http://www.kushino-nouen.com/)を通じ、ユズコショウを販売している。このほか、大分県の特産品ホームページ「物産おおいた」(http://bussan-oita.jp/)で、県内約20業者が生産する商品が紹介されている。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=86797