口や首にかけて発症する「頭頸部(とうけいぶ)がん」の治療方法をめぐり、滋賀医科大学(大津市)などの研究チームが、がん細胞内の特定のタンパク質の含有量を測定することで有効な治療法が判明することを突き止めた。実用化が進めば、体にダメージを与えない効率的な方法でがん治療に取り組むことができ、研究成果は近く、米オンライン科学誌「プロスワン」でも紹介される。
滋賀医大臨床検査医学、歯科口腔(こうくう)外科学、京都府立医科大耳鼻咽喉科の3チームが合同で研究した。これまで頭頸部がん治療法の選択は、医師の経験に依存するケースが多かった。
今回、約100の症例を検証する中で、患者のがん細胞内に含まれるタンパク質「P62」の分子数に異常の出るケースがあることが分かった。研究チームは過去のマウス実験の報告でP62が多いと肝がん発症率が高まるとするデータに注目していた。
P62は、細胞内で毒素を分解するよう働き、健常者のひとつの細胞内にも通常、1~2個の分子が存在する。だが頭頸部がんを患った場合、通常のままの患者もいるが、5~10倍に増える患者が約5割近くに達することが判明した。研究ではこの増加に着目し、多い場合は投薬による「化学療法」を、少ない場合は「放射線治療」が適切であると結論づけた。
P62の数値が高い場合に放射線治療を選択すると、放射線が発するがん細胞除去の毒素をP62が殺傷してしまうため適さないという。手術については双方でケースによって選択される。
頭頸部がんは早期に治療しない場合、発声や呼吸が困難になったり、患部がコブ状になったりするうえ、再発の可能性も高まる。この治療法が確立されれば、無駄な治療が減るうえ、今後肺がんなど他部位のがん細胞治療にも適用できる可能性がある。滋賀医大の茶野徳宏准教授は「大きな負担が掛かる放射線治療を効果のない患者にすることを回避できるのは非常に大きい」と指摘している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130824119.html










