◇悪質業者排除へ転換
注文していない高齢者に健康食品を送りつけて代金を請求する「送りつけ商法」の被害が急増するなか、日本郵便(本社・東京都)が7月下旬から、警察より悪質業者名の提供を受けた場合、窓口での荷物の引き受けを断り始めたことが分かった。送りつけ商法の代金の受け渡しには同社の「ゆうパック」の代金引き換え(代引き)サービスのうち、事前審査の不要な窓口引き受けが悪用されることが多く、消費生活センターからは「一定の被害防止が期待できる」との声が上がっている。
この悪質商法は、業者が電話をし、「健康食品を申し込んだ」と言い張って商品を送りつけ、代金支払いを求める。断ると「バカたれ、死んでしまえ」などと怒鳴って支払いを求めてくることもあり、消費者は恐怖感から押し切られて支払うケースが目立つという。国民生活センターによると、全国の消費生活センターへの相談は2012年度に1万5527件で前年度(2751件)の5倍以上と急増。今年度は8月1日までの4カ月で1万6690件に上り、既に昨年度の件数を上回った。被害者の9割以上は60歳以上という。
代金受け渡しに多用されるのが「ゆうパック」だ。宅配業者の代引きサービスは、配達員が郵送物を宛先に渡す際に、差出人の指定した金額を代わりに受け取る。大手宅配業者は代引き利用業者を事前に審査して契約し、問題があれば契約を解除する。だが、ゆうパックだけは事前の審査なしで当日窓口で受け付ける独自サービスも提供。日本郵便によると、これが悪用されているという。ある消費生活センターによると、最近数カ月の相談で、悪質業者が使う宅配の代引きは「100%近くがゆうパックだった」という。
同社には消費生活センターなどから苦情を含む情報が寄せられるが、「犯罪性の有無の判断が難しく、悩んでいた」とする。このため7月から都道府県警と連携。警察から悪質業者名の情報提供を受けた場合は、同社が該当業者について調査のうえ、数日以内に全国の郵便窓口に通知。該当業者が窓口に荷物を持ち込んだ場合は引き受けないことにした。
また、宛先からの受け取り拒否件数が多い▽一度に大量の商品を持ち込む--など不自然なケースがあれば警察に情報提供する。
ただ、業者が社名を変えると受け取り拒否ができない。消費生活センターからは「事前審査なしの代引き引き受けは悪質業者の抜け道になるためやめるべきだ」との意見もあるが、ネットオークションの広がりで需要はむしろ高まっている。日本郵便は「サービスは続けたいが犯罪に加担したくない。覚えのないゆうパックはきっぱりと断ってほしい」と注意を呼び掛けている。【大迫麻記子】
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20130803k0000m040126000c.html