1日中座りっぱなしでいると健康に良くないのは誰もが知っていますが、そうせざるを得ない人もたくさんいます。こうしたライフスタイルの弊害は、幸いにも「スケジュールを立てること」でびっくりするほど簡単に克服できます。具体的な方法を紹介しましょう。
1日中座りっぱなしでいるにせよ、コンピューターの画面を見つめ続けているにせよ、はたまた絶え間なくキーボードを叩いているにせよ、オフィスワークは思った以上に危険がいっぱいです。まさかと思うかもしれませんが、身体を動かさないでいると、長期的には深刻な問題を引き起こすのです。
こうした弊害から身を守るためのスケジュールを立てるにあたり、サウスカロライナ大学エイケン校運動健康科学学部のBrian Parr氏にお話しを伺いました。実際にスケジュールの話へ入る前に、まずは、オフィスワークが身体にどのような影響を与えるのかを簡単に見ておきましょう。
スケジュールの効用
立ち上がったり軽く体を動かしたりすることまでスケジュールに組み込んでみましょう。ちょっとやり過ぎにも思えますが、人はそうしたことをなかなか進んでやろうとはしないものなので、何らかの動機付けが必要です。
以前、カレンダーを使って生活を「プログラム」することにより、つい怠りがちな毎日のルーチンを予定どおりこなせるようにするワザを紹介しました。今回プログラムするのは、大したことには思えない手首の運動や、立ち上がること、1日中何度も動き回ること、そして、時々コンピューターの前を離れることです。このスケジュールをきちんと守れば、健康への長期的な効果は絶大ですし、たくさん運動をする必要もありません。
取り組むべき健康問題
多くの人は平均して1日に15時間ほどを座って過ごしており、それがあらゆる生理学的変化を引き起こすと考えられています。もっと悪いことに、コンピューターの前で作業をしている時、私たちは目と手首にもダメージを与えています。オフィスワークが身体にもたらす影響を詳しく見てみましょう。
デスクワークが健康全般に及ぼす影響
1日中座って過ごすと身体にどのような影響が出るかを詳しく調べたところ、憂鬱になるようなものばかりでした。長期的な弊害としては、心疾患や特定のガンリスクの上昇などが指摘されています。また、短期的な影響を見ても、座りっぱなしでいると体脂肪の調節機能が大きく変化し、体重の増加につながります。「ABC News」の記事に、その理由が手短かにまとめられています。
「座っている時は、特に下半身にある大きな筋肉への負荷がまったくなくなります。そのような筋肉は、正しく機能していない状態にあるのです」と、オーストラリアの心臓・糖尿病研究所に勤めるNeville Owen博士は述べています。Owen博士は、このように身体を動かさないと、新陳代謝の変化が誘発され、科学者がバイオマーカーと呼ぶ、ガンと密接なつながりを持つ多数の生物学的指標が作り出されると説明しています。
基本的に、座っている状態だと身体は大した動きをしていないため、それを毎日続けていれば、あらゆる長期的な問題が引き起こされるのです。
コンピューターの画面が目に及ぼす影響
長い時間、何かをずっと見続けていると、目が疲れますね。目の疲れは、自動車の運転や読書、またはコンピューター画面を長時間見続けることが原因になります。大抵の場合、長期的な影響はないそうですが、短期的にでも起これば、その日が台無しになることもあります。
目の疲れは、一日中コンピューターの画面を見ているすべての人に関わる問題で、ドライアイ、かすみ目、頭痛など、さまざまな短期的な症状を引き起こします。こうした症状は、仕事の支障となり、集中力や生産性を低下させます。
キーボードが手首に及ぼす影響
反復運動過多損傷(Repetitive Strain Injury、以下RSI)は、「長期間、同じ姿勢で同一の筋肉を酷使することにより、神経や腱、筋肉に異常をきたす疾患」で、多くのオフィスワーカーが悩まされています。RSIは多くの場合、キーボードを長期間使用した結果、手首や指の手根管症候群(carpal tunnel syndrome、以下CTS)として現われます。指や手首の痛み、しびれ感、鈍痛などは、CTSが引き起こす一般的な症状です。
治療せずにCTSが収まることもありますが、必ずそうなるとは限りません。最悪の場合は手術が必要ですが、手首に副木を当てたり、抗炎症薬のコルチコステロイドを注射したりといった、手術を伴わない方法でさえ気が重いものです。総じて、カラダに良い快適な仕事環境を整えることがCTSを防ぐ第一歩ですが、休憩を取ることも同じように大切です。
健康問題に対処する日課の立て方
オフィスワークが引き起こす健康問題を防ぐ特効薬は存在しませんが、こうした問題をできる限り防ぐようなスケジュールを立てることはできます。Parr氏の助言を受けながら、1日平均8時間労働の人が健康問題を防ぐのに役立つスケジュールを作ってみました。勤務時間は午前9時から午後5時と想定しています。Parr氏が指摘するように、ここでの主な目的は、「少なくとも30分に一度はコンピューターから離れろ」というシンプルなものです。
「1時間に5~10分間の運動」は、適切な目標になると思います。それは、30分ごとに5分間でも良いし、1時間ごとに10分間でも構いません。言うまでもなく、短時間の運動に協力的な職場もあれば、そうでないところもあるでしょう。ここで紹介するアイデアの多くは、「こっそり」実行できるものなので、あなたが体をもっと動かそうとしても、誰にも知られずに済むでしょう。
得られる恩恵は計り知れません。30分ごとに休憩を挟むスケジュールを立てれば、目の疲れやRSIといった、座りっぱなしの弊害が、1回の休憩で解消されるでしょう。そして何よりも、自分に合った適切な運動を行えることは最大のメリットです。あなたがすべきことについて、Parr氏はこう説明しています。
ほとんどの人は、こうした運動のすべてに興味があると思いますが、人によっては、ある種の運動を特に重視したい場合もあるでしょう。例えば、1日の大半をタイピングやデータ入力に費やしている人は、コンピューターを使わない人に比べて、目の疲れや手首の運動などにより注目すべきです。
こうした運動を1日の中で分けて行うのも合理的といえます。数秒から1分程度でもいいので、少なくとも30分に1度の割合で椅子から立ち上がることは、とても賢明だと思います。また、数分ごとにモニターから視線を外して目の疲れを防ぐのも、良いアイデアです。
ですから、1時間に10分の運動を採り入れた計画なら、このようになるでしょう。
5分間イスから立ち上がってオフィスの中を動き回る(コーヒーを入れたり、郵便物をチェックしたり、トイレに行ったりなど)。
1時間につき5分はストレッチを行い、次の1時間のうちの5分は筋トレを行う。
もちろん、毎日の「運動」を組み立てる方法はいくらでもあるので、選択肢にもこと欠きません。このようにすれば、1日が終わるまでに、主な筋肉の各部位に対してストレッチ運動と筋トレを済ませることも、十分可能です。多くの人にとって、これは大変な運動量になります!
朝9時、出社してからのサンプルスケジュール
以上の点を考慮に入れたサンプルのスケジュールを紹介します。これに沿って運動を採り入れれば、デスクワークの弊害から身を守ることができるでしょう。運動の内容は好みに合わせて入れ替えてもかまいませんし、その日によって変えるのも良いでしょう。ただし、実行する時間だけは守るようにしてください。
午前9時:職場に到着。
午前9時半:席を立って5分間歩き回る。
午前10時:5分間のストレッチ。肩のストレッチ、上腕のストレッチ、胸のストレッチをして、仕事に掛かる。
午前10時半:5分間、手首の運動。祈りのポーズのストレッチ、手首の屈筋と伸筋のストレッチを行う。
午前11時:5分間の筋トレ。このリストまたはこのリストから、オフィスで行っても違和感のない運動をいくつか選ぶ。ペットボトル挙げ、脚上げ、および、ふくらはぎ強化の運動は、あまり気付かれずにオフィスでちょっとした筋トレを行うお勧めの方法です。
午前11時半:席を立って5分間歩き回る。
午後12時:5分間のストレッチ。今回は背筋のストレッチを行う。腰まわりのストレッチ、背中と上腕二頭筋のストレッチ、そして背伸び。
午後12時半:手首の筋トレ。スクイーズ、リストロール、リストカールを行う。
午後1時:5分間の筋トレ。このリストまたはこのリストから、オフィスで行っても違和感のない運動をいくつか選ぶ。
午後1時半:席を立って5分間歩き回る。
午後2時:5分間のストレッチ。今回は、足のストレッチを行う。ハムストリング・ストレッチ、太ももの立位ストレッチ、そしてレッグ・エクステンションを5分間行う。
午後2時半:席を立って5分間歩き回る。
午後3時:5分間の筋トレ。このリストまたはこのリストから、オフィスで行っても違和感のない運動をいくつか選ぶ。
午後3時半:席を立って5分間歩き回る。
午後4時:5分間のストレッチ。チンタック(顎を引く)、ヘッドターン(頭を横に向ける)、そしてネックストレッチ(首を左右に傾ける)を行う。
午後4時半:席を立って5分間歩き回る。
午後5時:退社。
以上です。全部を見渡すとかなりの量に感じるかもしれませんが、実際には、合計1時間強の動作や運動を、汗をかくことすらなく仕事時間中に済ませているのです。そしてこれは、デスクワークが引き起こすすべての弊害から身を守り、あなたの健康を総合的に維持するものなのです。
http://news.goo.ne.jp/article/lifehacker/bizskills/healthcare/lifehacker_32675.html