少子化対策がいかに急務か。それを改めて実感させる数字である。
厚生労働省が公表した2012年の人口動態統計によると、昨年、生まれた赤ちゃんは103万7000人で、統計を取り始めた1899年以降、最少だった。
人口の自然減は最多の21万9000人に達した。
1人の女性が生涯に産む子供の数の推計値である合計特殊出生率は、前年の1・39から1・41に上昇した。「団塊ジュニア」と呼ばれ、人口の多い40歳前後の出産が増えたのが要因だが、出生率のわずかな上昇だけでは喜べない。
団塊ジュニアより若い世代の人口は少なく、出生数は今後さらに減少すると予想される。
人口減少が続けば、高齢者を支える現役世代の負担は重くなるばかりだ。働き手の減少は経済成長の足かせともなる。
少子化に歯止めをかける実効性のある施策が求められる。
政府は7日、少子化に関する当面の対策を決定した。有識者会議が先月末に提言した「少子化危機突破のための緊急対策」を踏まえたものだ。
緊急対策の特徴は、従来の「子育て支援」「働き方改革」に加え、「結婚・妊娠・出産支援」を対策の柱として打ち出したことだ。
例えば、出産直後の母子の授乳支援や心身のケアを行う「産後ケアセンター」など地域の支援体制の強化を挙げた。産前・産後の不安を解消できるよう相談窓口の改善を求めている。
「妊娠・出産に関する情報提供」の重要性も強調している。
具体策として検討していた「生命と女性の手帳」の配布は見送られた。妊娠適齢期などについての情報の記載に対し、「国が出産時期を押しつけるのか」といった批判が相次いだためだ。
だが、医学的に出産に適した時期を逸して悔やむ人は少なくない。出産するかしないか、いつ出産するかということは個人の自由ではあるが、出産に関する正しい知識の普及啓発は必要だろう。
少子化対策では、横浜市が保育所の「待機児童ゼロ」を実現したように、地方では成果を上げた事例もある。男性向けの「父親教室」や、若い男女のための「婚活」の場を設ける自治体もある。
政府の経済財政諮問会議が近くまとめる「骨太方針」にも、結婚・妊娠・出産支援が盛り込まれる見通しだ。少子化対策で打つべき手は出そろっている。肝心なのは着実に実行に移すことである。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/education/20130608-567-OYT1T01229.html