スマホをいじっていて盗撮を疑われたら
■私服警官はずっと不審者をつけている
盗撮事件が非常に増えている。刑事事件の弁護を扱う私たちの事務所では、この2年で盗撮に関する相談はおよそ2倍に増加した。
以前はかばんに小型の特殊なカメラを仕込んで盗撮するような事件が多かったが、最近は主にスマートフォンが使われている。シャッター音を消すアプリも登場し、テクノロジーの発達で誰でも簡単に盗撮できる環境ができた、ということだろう。
盗撮事件がよく発生する場所は階段や電車の中である。意外によくあるのがショッピング中。たとえば書店で女性客が立ち読みしているスキに、カシャッと盗撮していくのだ。
「横浜駅○○の階段」というように、盗撮が多発する特定のスポットもある。そうした場所では私服警官が見回りを行い、監視カメラもいっぱい設置されている。
そして挙動不審で女性の後をつけ回している人を見つけると、私服警官はずっと後をつけていく。それも1人ではなく2人組で行動するのだ。そうやって慎重に不審者の行動を把握し、盗撮を行った現場を押さえ、確実に捕まえるのである。
このようにして警察官に捕まった場合、証拠となる画像や動画のデータが残っていることもあり、えん罪はまず起こりえない。
一方、警官ではなく一般の人が盗撮の現場を目撃し「あなた、いま盗撮していただろ!」と言われるケースもある。実際にはやっていないのに盗撮を疑われることがあるとすれば、こちらのケースになるだろう。
盗撮した人は各都道府県の迷惑行為防止条例によって処罰される。東京都の場合、最高で罰金は100万円、懲役は2年である。初犯であれば罰金ですむ場合も多いが、これが2度、3度と続けば、正式裁判となり、厳しい判決が下るだろう。
1度捕まっているのに2度も3度も繰り返す人がいるのか、と思われるかもしれないが、執行猶予中でも繰り返す人はいるのである。そうした性的な犯罪を繰り返す人に対し、私たちは性嗜好障害を専門とするクリニックを紹介したりもする。
スカートの中ではなく、携帯で服の上から女性のお尻を撮影して有罪判決が下された事件もある。服の上からでも有罪になるのは、迷惑行為防止条例が処罰の対象としているのが盗撮そのものではなく、「公衆を不安に陥れるような行為」だからである。この事件では11回も撮影した犯人の執拗さが問題になった。
ただ、実際の警察の対応としては大人しく盗撮を認め、素直に謝れば警察で事情聴取し、身元引受人を呼んでその日のうちに帰宅させるのが主流である。つまり逮捕はせず、任意同行だけで終わりということだ。
しかし中途半端に犯行を否定したり、逃げようとすると逮捕される。なかにはSDカードを捨てたり、スマホをかみ砕いて証拠を消そうとした人もいるが、それでは自白しているようなもの。当然、そうした人たちは逮捕されている。
さて、やっていないのに盗撮を疑われたらどうするべきかを考えてみよう。痴漢では身に覚えがなければ逃げなさいと言っている弁護士を見かけるが、実は逃げようとして周囲の人たちに取り押さえられ、ひどい目にあうケースがよく起こっている。
痴漢の場合、やった・やっていないの証明は難しいが、スマホで盗撮を疑われても、内部のデータを見ればやったかどうかは一目瞭然である。ならば対応する煩わしさはあるにせよ「やっていません」と堂々と対応すればよい。証拠がなければ警察に連れていかれても、「今後、疑われるような行為はしません」と上申書を提出して終わりになるだろう。
http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/president_9079.html