やけどをしてしまったときの応急処置には水道から流しっぱなしにした冷水を患部に当てるというのが定説だ。しかし形成・美容外科の医学雑誌「ジャーナル・オブ・プラスティック・リコンストラクティブ&エステティック・サージャリー」に掲載されたスイスの研究者グループの研究結果によると、組織の損傷を限定し血流を再開するためには冷たい水の代わりに温かいお湯の方が効果的だという。
この研究は、麻酔をしたラットの背中4カ所に熱した金属の板を使って同じサイズのやけどを作って実施した。(この前後に痛み止めの処置も施した)
1つのグループではセ氏17度の水に浸したガーゼを患部に20分かぶせた。第2のグループはセ氏37度のぬるま湯に浸したガーゼをかぶせた。第3のグループは何もしなかった。
手当てをしなかったラットのやけどは24時間以内に、より深い組織にも広がった。一方、手当を施したラットの傷は広がらなかった。
4日後、どのグループのラットも、やけどとやけどの間の組織も損傷、つまり壊死を起こした。しかしぬるま湯で治療したラットの場合、他のグループより壊死の度合いがはるかに軽かった。冷たい水で手当てしたグループではやけど間の組織の壊死が81%、手当しなかったグループでは94%だった一方、ぬるま湯で手当てしたグループは65%にとどまった。
実験を行った研究者によると、この実験はラットで行ったが仕組みは人間でも同じだと言う。研究を主導したスイス・バーゼルのレト・ベットシュタイン博士によると、冷たい水を患部にあてると皮膚を冷やすことができるが20分たつと痛くなってくる上、皮膚の温度を異常に下げてしまう。同博士は最初に1分程度冷水で冷やしたあとで血流を促すためぬるま湯に切り替えるという。
注意:この処置は手術の必要ない2度(真皮までの損傷)までのやけどに対するものだ。やけどに伴うショックや低体温症などやけどに伴う合併症の可能性は考慮していない。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323994204578341643612940134.html