シニア向けのパソコン教室ではタブレット端末やスマホの使い方講座が設けられ、8月にはシニア向けのスマホも登場する。東日本大震災以降は、災害時の安否確認や情報入手のツールとしても期待される。シニア層の間でタブレット端末やスマホが盛り上がりつつあるようだ。
80歳の女性がアップルのタブレット端末「iPad」の絵地図アプリを駆使しながら浅草を散歩。珍しいものが見つかったらカメラを起動して撮影。iPadを使い始めたのは2カ月前だが慣れた手つきで、画面をタッチしてスワイプやピンチアウトなどの操作をこなす。
全国優良パソコン教室協会(通称、パソコープ)、シニア向けツアーを手がける旅行会社のクラブツーリズム、アプリ開発会社のセブンシーズ・テックワークスの3社が企画した「iPad・スマホで楽しむ東京下町散歩4日間講座」の一場面だ。
パソコープに加盟する関東近郊の8カ所のパソコン教室から40人が参加。最初の2日間でiPadやスマートフォンの使い方講習を受けて、今回の街歩きに臨んだ。書籍「東京下町散歩」の作者である高橋美江さんがガイドを務める。参加者は高橋さんが監修した地図アプリ「東京下町散歩」を使いながら、浅草の街を散歩。味わいのある親しみやすい絵地図を見ながら、高橋さんお勧めのスポットを巡ったり、雷門などの写真を撮影したりした。最後の講座は、浅草で撮影した写真をTwitterに投稿して、思い出を共有する。
シニア層にもタブレット端末とスマホが広がっている。パソコープの東禎章代表理事によると、iPadをはじめとするタブレットやスマホの使い方を教える講座は人気という。iPadやスマホは、家でも外出先でもすぐにインターネットにつながって、様々な使い方ができる。
参加者からは、「マウスが苦手でパソコンはなかなか上手に使えなかった。画面の文字を指で触った方が使いやすい」(70代の女性)、「iPadだとすぐにネットが見られて、好きな野球の情報を調べられる」(60代女性)、「文字が大きくて見やすい」(60代男性)という声が聞かれた。
東代表理事は、「iPadやスマホは若者やビジネスマンだけではなく、むしろシニア世代にこそふさわしい情報端末。災害時の安否確認や情報収集のツールとして使えるように、趣味や日々の生活の中で使い慣れてほしい」と語る。
シニア層向けのスマホも8月上旬に登場する。NTTドコモが発売する富士通の「らくらくスマートフォン」だ。累計2100万台以上を販売する人気携帯電話「らくらくホン」のスマホ版だ。
NTTドコモのプロダクト部長の丸山誠二氏によると、「55歳以上の携帯電話利用者の42.6%はスマートフォンを今後使ってみたいという調査結果を得ている」という。スマートフォンを購入したい主な理由は、「画面が大きくて見やすい」「パソコンと同じインターネットサイトが見られるから」「タッチパネルが使える」など。
逆にスマホ利用時の不安点としては、「操作や設定が難しそう」「データ通信料金が高い」の2点が挙がった。らくらくスマートフォンでは、大きなボタンと読みやすい文字サイズのメニューを用意。Googleアカウントを取得せずに使える仕組みも盛り込んだ。パケット定額サービスは、2980円で使い放題の専用料金プランを用意。通常の「パケ・ホーダイ フラット」よりも2480円安い。
そのほかにも圧力を検知する新構造のタッチパネルを採用。物理ボタンのように画面を押し込んでタッチしたかどうかを判断する。誤操作を防ぐとともに、操作していることを利用者がはっきりと分かるように配慮した。らくらくホンと同じメニューを搭載しており、買い替えても同じように使えるように工夫している。
らくらくスマートフォン専用のSNS「らくらくコミュニティ」も開設する。写真を投稿して友達に公開したり、友達の書き込みに対して感想やコメントを付けたりできる。誤った投稿やセールス、勧誘投稿に24時間対応できる専門スタッフを配置して、安心して使える環境を整える予定だ。
シニアにとってこれまでパソコンは、デジカメで撮影した写真を印刷したり、年賀状を作成したりする趣味の1つだった。それに対して、タブレット端末やスマホは、より実用的なものとして、情報を共有したり、発信したり、これまでよりも幅広い使い方ができる。シニア層に着実に広がりつつあるタブレット端末とスマホ。東理事が語るように災害時の安否確認や情報収集のツールとしても期待される。
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