[ カテゴリー:生活 ]

なぜ「交際費」と「娯楽費」を分ける人はお金が貯まらないか

■贅沢しているつもりはないという「言い訳」

「贅沢しているつもりはないのに、なぜかお金が貯まりません」

そう言って、相談に来られる人は少なくありません。

正直言うと、まだ相談業務に慣れていなかったときの私は、こう切り出されると、頭の中で「え?  贅沢していないのに、なぜお金が貯まらないのだろう」「私はきちんとアドバイスができるだろうか」とビクビクしていたものです。

しかしながら、家計を見れば一目瞭然。なんていうことはありません。ちゃんと使っています。いろんな家計を拝見していくうちに、「贅沢」を「贅沢」と認識できない落とし穴がいくつかあることに気が付いてきました。

そのことに触れる前に、とても重要なことを一つ確認しておきたいと思います。

お金は使えば無くなり、使わなければ貯まる、ということです。いわば、「お金の法則」です。

「当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、こんな至極当たり前のことでさえ、日々の生活にお金を使う場面が多くなると、分からなくなってしまうのです。だから、冒頭のセリフをもって相談に来られる方が後を絶ちません。

落とし穴【1】「贅沢」の基準がない

「毎月○万円以上使ったら、贅沢です」という明確な基準はどこにもありません。「贅沢」の基準は人それぞれです。そもそものところですが、相談者にとって「贅沢」ではない支出と思っても、相談者の収入からみれば少なくとも身の丈に合った支出ではない、ということがあります。

では、なぜ身の丈に合っていない支出をしていても、それを「贅沢ではない」と認識してしまうのでしょうか。そこには1つのパターンがあります。

相談者は異口同音にして、「必要な支出です」「削れません」といいます。「贅沢しているのではなく、必要だ」というのが、言い分のようです。

本当にそうでしょうか。

■「健康のため」なら高額品は許される? 

私がこれまで見てきた例でいうと、健康食品、タクシー代、グリーン車、ペット関連費、交際費、被服費、習い事、通信費などが、その「必要&削れない」支出の代表的な内容です。

例えば、健康食品を考えてみましょう。「健康のため」に、少し価格が高くとも天然の食材を買う、というと確かに「必要」な支出にみえます。

ただ、このとき考えたいのは、「目的」と「手段」です。

「目的」は健康になること。その「手段」として、高い健康食材を購入している、という構図です。健康は財産ですから、目的は決して間違っていません。そのための支出となれば、少々高くとも「贅沢」と認識されにくいのも、何だかうなずけます。

しかし、そのための「手段」は、本当に高い食材を買うことだけなのでしょうか。 

天然で体にいい食材を使ったお料理を食べている一方で、まったく運動もしない、たばこを吸う、甘いものがやめられない、偏食があるといった健康によくないことも行っているとしたら、どうでしょう。食材の効果も半減ではないでしょうか。

つまり、「目的」を達成するための「手段」を幅広く考えることが大事です。そして、できるだけお金のかからない方法を意識して模索してみることも大事です。

このケースであれば、ジョギングするなど体を動かすことを考えるのは効果的でしょう。自治体の健康センターを安く利用してトレーニングするのもいいかもしれません。

相談者の生活に24時間寄り添っているわけではないので、すべてを「必要ではない」とは言えませんが、貯蓄できていないのであれば、せめて身の丈を超えた支出をしている事実に気づかなければなりません。でないと、キリがありません。

落とし穴【2】家計簿の費目が多い

家計簿をしっかりつけようとすると、どうしても「費目」を細かく分けようとしてしまいます。これは良い面もありますが、悪い面もあります。特に、贅沢しているつもりはないのに貯蓄できない人の場合、このことが裏目に出ます。一つひとつの費目の支出はそれほど高くないのですが、合計すると高いのです。

費目が細かいために、一つひとつは収入に対してそれほど金額は高く見えません。ですから、「贅沢していない」という認識を生み出します。ところが、そうした細かい費目を足し合わせていくと、それ相応の額になっている、ということです。

■「費目名」に隠された浪費の罠

小遣い、交際費、被服費、日用雑費、娯楽費、習い事、その他、とくくられる費目は要注意です。ごく普通の費目名に思えますが、罠が仕掛けられています。

例えば、誰か他の人と一緒のレジャーは「交際費」、家族だけで楽しむ場合は「娯楽費」と分けて認識したいとしましょう。それぞれの数字を把握したいのであれば、もちろん分けること自体は悪くありません。しかし、細かく分けたところで、家計改善上ではあまり意味はありません(*)。

支出額が小さく見えて気に留められないくらいであれば、むしろ分けない方がいいといえます。「余暇のお金」としてひとくくりにした方が、まとまった金額を使っていることが見えやすくなります。

落とし穴【3】人生の「使い時」である

「お金が貯まらない」と相談に来られる人は、毎月赤字であることを心配しています。ところが、長い人生を俯瞰してみると、なかなかお金が貯まりにくい「使い時」ともいえる時期があるのは珍しくありません。その大きな要因は教育費です。

子供が高校、大学生になる頃は、一般に教育費のピークを迎えます。世帯主の年齢でいうと40代後半から50代にかけてという方が多いです。

この時期は、ある意味貯蓄がなかなかできなくても仕方がないものです。もちろんすべての家計で赤字続きではありませんが、少なくとも貯蓄ペースは鈍化するものです。

この場合、「贅沢しているつもりはないのにお金が貯まらない」のは本当にそうで、お金が貯まらない原因は教育費にあります。このために貯めてきた貯蓄ですから、取り崩すことも決して家計に問題があるわけではありません。

教育費にメドがついて子供が経済的に独立すると、リタイアまでの期間をかけて貯蓄形成が再びできるようになります。人生最後の「貯め時」を迎えるわけです。

こうした相談では、私から特段何かアドバイスするというよりも、時間軸をもって家計を捉えるだけで、相談者はとても安心するようです。月の収支で一喜一憂する必要はないのです。

さて、3つの落とし穴をご紹介しましたが、私の経験上、多くの方は【1】と【2】の複合パターンで、【3】のケースは少ないです。

もし、あなたが「贅沢しているつもりもないのにお金が貯まらない」と思うとしたら、【1】や【2】のパターンに陥っていないか、家計を振り返ってみてはいかがでしょうか。

*家計改善では、「何」に使ったかよりも、「なぜ」買ったのかの方が大事だから。詳しくは、「なぜお金に好かれる人は『家計簿をつけない』か」を参照ください(http://president.jp/articles/-/13390)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150107-00014303-president-bus_all

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