2013年12月5日、独立行政法人国民生活センターから、豆乳等によるアレルギーについての注意喚起がありました。大豆は、食物アレルギーのアレルゲンの一つですが、また別の口腔アレルギーを引き起こすこともあるのです。
豆乳は、原料の大豆にさまざまな栄養素、またイソフラボンやサポニンなどのフィトケミカルも含まれており、健康の分野でもその機能性が注目され、人気のある食品の一つです。
今回の注意喚起は、シラカンバ(シラカバとも呼ばれる)等の花粉症に関係があります。これから初夏頃までカバノキ科植物の開花時期となり、現代人は花粉症が増加傾向にあるためです。また、大豆アレルギーがおこる仕組みとは違うため、自分では食物アレルギーは関係ないと思っている人にアレルギー症状が出ることもあり、注意が必要です。
■豆乳アレルギーの主な症状
国民生活センターでは、豆乳等により、皮膚や粘膜のかゆみや赤み、腫れ等のアレルギー症状を発症したという相談が2008年度以降の約5年間(2013年10月末)で15件寄せられていたそうです。しかも、その相談の中には、豆腐など他の大豆加工食品ではアレルギー症状が出ないにもかかわらず、豆乳等を飲んだ時に発症したという事例もみられました。
■なぜ納豆は平気でも、豆乳でアレルギー症状が起きるの?
花粉症との関係についてですが、シラカンバ、ハンノキなどのカバノキ科の植物の花粉には、「PR-10」というアレルゲンタンパクが含まれています。この「PR-10」と似たアレルゲンが大豆にも含まれているため(大豆のアレルゲンタンパクは「Glym4」)に、カバノキ科の花粉症患者の中には、豆乳等を飲んだ時にアレルギーを発症するケースが見られるのです。
「Glym4」は加熱や発酵など加工処理をすることで、アレルギー症状が出にくくなります。味噌や醤油、納豆などの加工製品よりも加工の程度が低い豆乳では、アレルギー症状が起こりやすくなります。
また豆乳が液体というのもアレルギー症状が起こりやすいと考えられています。というのも、豆腐はにがり等で凝固されているため、口腔粘膜からのタンパクの吸収が悪いため発症しにくいと考えられています。
凝固が弱いおぼろ豆腐などでは豆乳と同程度の「Glym4」を含むという報告があり、重篤な患者の場合は、豆乳だけでなく豆腐やもやし、枝豆でも症状が出ることもあるそうです。
■花粉症の人は果物アレルギーにもご注意を!
花粉の「PR-10」と似たようなアレルゲンタンパクは、大豆以外にも、リンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、ビワなどのバラ科の果物にも含まれているため、バラ科の果物を食べても、シラカンバの花粉が入ったと体が勘違いしてアレルギー症状を引き起こすことがあります。豆乳等によるアレルギーと果物によるアレルギー症状(口腔アレルギー症候群)が合併することも多いそうです。
■複雑な食物アレルギーの原因
大豆をたくさん食べ続けたから発症するというものではありません。また花粉症がある方でも、スギ花粉で大豆アレルギーになることはありません。ただし、カバノキ科花粉は春に飛散する花粉で、スギ花粉の飛散時期とも重なるので、その判別には医療機関で血液検査などが必要です。
花粉の原因となるシラカンバは、日本では北海道・本州中部以北の寒冷地にしかなく、北海道ではその花粉症と豆乳によるアレルギーの告知も多くされていますが、全国的にはまだよく知られていません。ハンノキは日本各地に分布しています。また、シラカンバやハンノキ属以外でも、ヨモギやカモガヤの花粉症なども食物アレルギーと関係するといわれています。
このように、食物アレルギーの分野では、食物アレルギーの原因の特定や治療がより複雑になってきています。食品業界に対して、豆乳等の商品に注意表示を広げるように要望されていますが、私たち生活者も、特に花粉症や果物による口腔アレルギーがある人は注意する必要があります。
文・南 恵子(All About 食と健康)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140221-00000005-nallabout-hlth