朝食にアイスクリーム! 快楽主義的な新提案がこの夏、活発化している。高級ホテルの朝食にアイス山盛りのパフェが登場し、フローズンヨーグルト専門店が朝食メニューを商品化。ひんやりした甘さで「寝起きから頭がスッキリする」などと好評だ。潮流の伏線は、5月に発表された「アイスクリームが脳によい影響を与える」との実験結果だ。どこか後ろめたかった行為も、大義名分を得て食習慣化するかも?(重松明子)
朝の日差しが窓越しの緑に輝くラウンジ。オードブルや卵料理とともに運ばれてきた豪華なパフェに、テーブルから「わぁ~」と歓声が上がった。一さじすくえば、ひんやり上品な甘味が染み渡り、幸福感とともに体が目覚めていくようだ。
東京・西新宿のハイアットリージェンシー東京は、宿泊プラン「シャンパンブランチ&スティ」(1万6650円~)を今月から刷新し、優雅な朝シャンパンのお供に朝パフェを登場させた。「フルーツやアイスたっぷりのパフェはシャンパンと相性が良く『朝から豪華』というコンセプトにも合う」と、提案した広報宣伝課の近藤和樹さん(28)。当初は異論も出たが、試作試食を経て一同納得。
担当の大谷勇シェフ(51)は「朝からパフェを食べるって、みんな子供の頃からの夢だと思うけど、現実にはなかなかできない。プランに組み込んでいることで、堂々と食べて気分を上げて」。この6千円相当のブランチが付き、プールやフィットネスジムが無料のお得な価格設定。女性2人組や1人でくつろぐ中年男性など幅広い利用があるそうだ。
一方、JR東京駅に隣接する丸の内オアゾ。地下1階の「ゴールデンスプーン」は、低カロリーのフローズンヨーグルトでアイスクリームの味わいを表現している専門店だ。今月、午前9時~11時の「朝食」としてアサイーボウル(390円)の提供を始めた。
単品350円と同量のフローズンヨーグルトに、シリアルやフルーツ、抗酸化食品アサイーのピューレを使用した、1食256・6キロカロリーのヘルシーな1品。提供時間帯の半数以上の1日平均15食の注文があるが、周辺企業と同じ午前9時開店のため出勤前の利用を取り込めないことが課題だ。このため「早期の営業時間の前倒し」を検討しニーズ掘り起こしをねらう。
そんな同店が朝食を商品化する契機となった発表がある。
森永乳業が杏林大学医学部の古賀良彦教授に依頼した「アイスクリームが脳機能へ与える影響」についての実験結果だ。それによると、ロングセラー商品の一口大アイス「ピノ」(バニラ)1粒摂取直後の脳波を測定したところ、比較対照の氷摂取時よりも高周波数のα波のパワーが拡大。「覚醒度(すっきり感)が高まり、情報処理速度を速める効果がある。食品実験でこれほど顕著な結果が出た事例は少ない」との教授所見とデータとともに「朝アイス」提案を広報すると、200件以上のウェブ媒体を通じて広がった。
同社が、発表日の5月13日以前と以降の各6週間のピノ(バニラ)の購入者伸長率を比較したところ、事務系会社員で1・4倍に増加。特に20代は2・3倍に激増と、若手ビジネスマンやOL層に大当たりしている。
「アイス売り場の活性化になると好意的な声の一方、食育上懸念の声もある。決して朝食の代替ではなく食後に数粒…というライトな提案をしています」と冷凍マーケティンググループの木下孝史マネジャー(40)。本日29日にはレアチーズ味&木苺チョコも発売される。
誰しも、朝が来るのが憂鬱な日もあるストレス社会。ささやかな“おめざ”の楽しみがあるのは、むしろ健康的かも?!
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130729517.html