性犯罪の被害に遭った女性たちが過去を乗り越え、前向きに生きる「今」を語り合う談話会が続けられている。自らの被害体験や、立ち直るまでの軌跡をブログにつづるなど、実名を公開して活動している大阪府の山本郁恵さん(34)が発案した集い。性犯罪被害者自身が苦しみから抜けだし、幸せに生きる姿を発信することで、「同じ苦しみを抱えた被害者に『生きることをあきらめない限り必ず出口はある』と伝えたい」という。(有川真理)
◆実名出し運営
堺市内の飲食店に2月中旬、女性7人の明るい声が響いた。「自分に価値がないという意識があった」「加害者のことは憎むし、自分が生まれたことすら憎んだ…」「でもつらいことがあったからこそ、人を愛する力に転換されていく」。自分たちの被害体験や今の生活、心の持ち方を和やかに話し合った。
「サバイバルサロン ぷれぜんと」と名付けられた談話会は昨年3月にスタート。山本さんのほか、趣旨に賛同した性犯罪の被害者3人が実名を出して運営している。談話会の名前には、生き抜いてきた自分へのご褒美と、過去にとらわれず今を生きるという意味を込めた。
これまでに大阪(堺)のほか東京、横浜、神戸で計4回開催し、内容の一部をホームページ上で公開している。
◆被害体験公表
「『幸せになる』と決意したときから自分が変わっていった」。今でこそ笑顔で話す山本さんだが、20歳のとき、19歳の少年3人から乱暴され、心に大きな傷を負った。家族にも打ち明けられず、自暴自棄となった。25歳の秋には「死んでもいい」と道路に寝転んだこともあった。しかし、死ぬことはできなかった。
「死にたいのに死ねないのは、私が生きたいと思っているからかも」
そう思った瞬間から、山本さんの生き方は変わり始めた。周囲の支えにも気づき、自分の人生を大切にしようと決めた。
「彼らにそういう目に遭わされたからといって、自分が幸せになれへんっていうのは違うなあって」
仕事にも前向きに取り組めるようになった。30歳になり、性犯罪被害に遭ったことをブログで公表、自分の率直な気持ちをつづるようになり、性犯罪被害者の集会にも出席して自らの体験を話すようになった。
自分の考えに賛同してくれる人たちが現れ、そのことが生きる励みになった。同じ思いの被害者3人が賛同し、談話会の開催につながった。談話会は、山本さんのそうした生き方の“結実”の一つだ。
◆気持ちを共有
山本さんによると、談話会に初めて参加した女性は「同じ経験をもつ者同士だからこそわかり合えることが多く、気持ちを共有できた。前向きな気分になれた」と感想を話していたといい、ほかの参加者からも、もっと開催してほしいという声が寄せられた。
「性暴力の被害者だって幸せになれる。心に大きな傷を負っても、幸せな未来や希望があることを伝えたい。私たちみたいな存在が、前向きに生きるひとつのきっかけとなれば」
次回の談話会は6月30日に東京都渋谷区で開かれる。参加対象は性犯罪の被害に遭っても、今、前向きに生きている人。参加費は6千円程度。問い合わせのメールは(mirai@yamatomirai.com)。談話会のブログは(http://present2012.jimdo.com/)。
産経新聞
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/education/snk20130508116.html