[ カテゴリー:社会 ]

<脱法ハーブ>規制強化目前、店頭には既に「次世代」商品

脱法ハーブの材料として使われる可能性のある772種の化学物質を厚生労働省が「指定薬物」とし、製造や販売を禁止する初の包括規制が22日から始まる。指定薬物は従来の92種から計851種に拡大され、規制方針が打ち出された昨年11月末時点では大半が規制対象となる見通しだった。しかし店頭には対象外の脱法ハーブが既に並ぶ。包括規制前夜の現場を歩いた。

「うちで売ってるハーブはすべて第10世代に対応してます」。東京・秋葉原の雑居ビルの一室。今月11日、金髪にスーツ姿の脱法ハーブ店の男性店員はそう説明した。10世代とは「業界」用語で包括規制の対象となる化学物質が含まれず、22日以降も「脱法」であり続ける商品のことだ。 これまで年1~2回だった指定薬物の追加は、この1年で4回目だ。その度に多くの店は店頭の商品を売り切り、規制外の化学物質を使った「次世代」商品に入れ替え、摘発を逃れてきた。ある男性経営者は「店側でもどの商品が違法か把握しきれないため、全て入れ替えるのが確実」と話す。

現在、全国に流通する商品の主流は8世代とされ、包括規制の対象となる。9世代については、東京都などが先月以降、「知事指定薬物」として独自の規制を導入したことで、店により商品の定義が異なるという。

包括規制の方針が出た直後、一部の通販サイトは「来年は営業できるか分からない」と掲載。「購入は今のうちに」とまとめ買いを勧め、長期保存の方法を紹介する業者も登場した。しかしそれも一時の「混乱」で男性経営者の店にも先月、規制対象外の商品が入荷し、今は入れ替えセールの真っただ中だ。

効果の兆しを感じた現場もあった。都内の別の店では昨年11月に25種ほどだった商品数が15種以下に減少。1日10人はいた客も今年に入り半減した。ハーブは1袋4000円前後で、原価はその半額だが、度重なる商品入れ替えや売り上げ減で経営は厳しいという。

アルバイトの20代の男子大学生は「興味本位の客が減った。吸引者が死亡したり、摘発が増えて社会的意識が高まったのでは」。都によると、都内では昨年4月、87店の脱法ハーブ店があったが先月には63店にまで減少したという。

ただ、ネット専門業者はつかみ切れていない上、卸業者の実態解明も課題だ。各都道府県では包括規制にあわせた試買調査などで監視を強める。警察当局も違法行為は積極的に摘発を進める方針だ。

◇毒性、依存性さらに強く

国立精神・神経医療研究センター依存性薬物研究室の舩田正彦室長によると、今回の包括規制の対象は、大まかに3系統に分類される「合成カンナビノイド」のうちの1系統となる。国内で流通する脱法ハーブがこの系統の化学物質を植物片に混ぜ込むものが主流だったためだ。

脱法ハーブの規制強化に伴い、店では覚醒剤と似た症状を引き起こす粉状の「フレグランスパウダー」、「アロマリキッド」と称したヘロインのような液状商品の占める割合が高くなっていた。これらは「合成カチノン」などと呼ばれ、別の化学物質が主成分となっている。

舩田室長は「包括規制を逃れた商品には毒性や依存性の強い商品が多く、危険も増している」と指摘。厚生労働省は更なる包括規制を検討しており、「今後も規制のスピードを上げていきたい」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130321-00000005-mai-soci

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