[ カテゴリー:社会 ]

フェイスブックで知らない人を友達承認の危険

PRESIDENT 2012年12月3日号 掲載

■書き込んだ内容は半永久的に残る

面識のない人とソーシャルメディア上で繋がることは、「拡散のリスク」を広げていくことにほかならない。フェイスブックやツイッター、ミクシィなどのソーシャルメディアでは、自分の発信した情報が、コントロールできないまま広がってしまう恐れがある。フェイスブックで「友達」を安易に増やすことは、様々なリスクを増やすことだともいえる。

たとえば11年1月には、都内のシティホテルのアルバイト店員が、ホテル内のレストランを利用していた著名人の情報をツイッターに書き込み、大きなトラブルになった。店員の個人情報がネット上に晒され、事実上、働き続けることができなくなった。ソーシャルメディアがなければ、こうしたトラブルは起きなかっただろう。親しい友人にメールで知らせる程度では問題にならなくても、ネット上に投稿することで、それが瞬く間に面識のない人たちへと拡散される。最悪の場合には、営業秘密の漏洩や名誉毀損などの責任を問われることになる。「友達」が少なければ絶対に安全というわけではないが、多いほうがよりリスクは高い。

トラブルが続発するようになり、企業側も、ソーシャルメディアの利用について、従業員に注意喚起を促すようになった。これまで企業側は、「営業秘密の漏洩」については強く警戒してきた。営業秘密とは、顧客データや製造ノウハウなど、アクセス制限が行われている秘密の情報のことで、これは不正競争防止法での保護の対象になっている。こうした「重い情報」は、ソーシャルメディアで流出することはまずない。このため企業側の危機意識は、それほど高くなかった。

ところが、ソーシャルメディアが一般に普及することで、守秘義務規定に明記されていないような「軽い情報」でも、大きなトラブルが起きるようになり、態度が変わった。就業規則や服務規定で、ソーシャルメディアの利用について注意事項や制限を設ける企業が次々と現れた。トラブルが起きたときに、「違反」を問えるようにしているのだ。

トラブルが増えている最大の要因は、発信速度の上昇だろう。10年ほど前までは、「HTML」というプログラミング言語を知らなければ、ネットでの情報発信はできなかった。2000年中ごろからブログが普及して、敷居が下がったことで、トラブルが増え始めた。今ではスマートフォンを使って、いつでも、どこでも、書き込みができる。内容を吟味したり、推敲を重ねたりする時間は、格段に短くなった。思いついてから、書くまでの速度が上昇している。

それに伴い、情報が拡散するスピードも速くなった。些細なトラブルが、急速に注目を集め、新聞沙汰にまで発展する。こうした「炎上」を起こすと、同じ職場で働き続けることは難しくなる。「軽い情報」の漏洩では、解雇はされなくても、譴責などの処分を受け、事実上の退職に追い込まれるケースも見受けられる。

インターネットの怖さは、書き込んだものが、いつまでも残るという点だ。違法に書き込まれた内容であっても、管理者でなければ削除ができない。また「炎上」すると、次々と転載が繰り返されるため、削除申請が追いつかず、半永久的に残ってしまう。個人名が晒されている場合には、氏名を検索されるたびに、過去のトラブルを知られてしまう。

トラブルを避けるには、ソーシャルメディアを利用しないことが一番だ。しかし、今やソーシャルメディアは情報社会のインフラとして普及しつつある。まったく利用しないのも難しいだろう。「友達」を増やすことへのリスクを理解したうえで、節度をもった利用を勧めたい。

(フランテック法律事務所 弁護士 金井高志)

http://news.goo.ne.jp/article/president/life/medical/president_8115.html

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