金融庁は25日、金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会を開き、インサイダー取引の規制強化に向けた報告書をとりまとめた。未公表の情報を漏洩(ろうえい)し、不正取引を招いた証券会社を課徴金処分の対象にするほか、悪質な場合は情報漏洩に関与した役職員の氏名を公表する。野村証券など証券大手3社の情報漏洩によって不正取引が相次いだのを受けた措置で、日本市場に対する「インサイダー天国」の汚名返上を目指す。
金融庁は、今回の報告書を踏まえ、来年の通常国会に金融商品取引法の改正案を提出したい考えだ。
報告書では、公募増資の主幹事証券会社などが不正取引を行わせる目的で未公表の重要情報を漏らし、実際に行われた場合、課徴金処分の対象にする。現在は情報の受領者だけが処分対象で、海外投資家を中心に「情報を提供していた側の責任を問えないのはおかしい」との指摘が多かった。 顧客の資産を運用し、実際に不正取引を行った機関投資家に対する課徴金額も、大幅に引き上げる。現行の課徴金は不正の対象になった取引の月額手数料の一部だが、少なすぎるとの批判があり、手数料の3カ月分にする。
企業が幅広い投資家から資金を集める公募増資は、株式市場で重要な情報の一つ。その情報を公表前に入手したインサイダー取引が横行すれば、市場の信頼性が失墜して流入資金が細り、企業の資金調達にも支障が出かねい。
一連の不正取引では、利益優先でルールを軽視する証券会社や機関投資家の体質に加え、日本市場の規制の甘さが浮き彫りになった。金融庁は「欧米諸国と比べても遜色ない」(幹部)規制にすることで、投資家の日本市場離れを食い止める狙いがある。
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