給食費アップ、食材は軽減税率なのに 広がる波紋
消費税率の引き上げと同じ今月から学校給食費を値上げした自治体の対応が、波紋を呼んでいる。消費税増税に伴う給食費の改定は過去にもあったが、今回は飲食料品に軽減税率が適用されており、「増税に伴う値上げはそぐわない」とみる専門家も。一方で、給食費の無償化に取り組む自治体もあり、地域によって保護者負担の格差が広がっている。(木ノ下めぐみ)
■堺市では360円増
堺市では、10月から市立小学校の給食費を360円値上げし、月額4410〜4590円とした。同市に住むパートの白石千帆さん(40)は7月、長男(9)の通う小学校から値上げの通知を受け取り、「増税で給食費も上がるのか」と理解したという。次男(6)の小学校入学も来年に控え、「子供は給食がおいしくて大好き。我慢するしかないが、できれば据え置きしてほしかった」と話す。
堺市教委には、値上げの通知後、複数の市民から「増税が理由なのか」と問い合わせがあったという。給食費を見直す際、多くの自治体では事前に市民に意見を求めるが、同市教委は聞き取りを行っていなかった。だが、担当者は「増税が理由というより、時期がたまたま重なっただけ」と強調する。
市教委によると、最大の理由は昨年8月の学校給食摂取基準の改正で、給食でとるべき栄養量が増え、食材費がかさむようになったため。担当者は「消費税率の引き上げで、輸送費なども上がる。このため増税は値上げの遠因にはなっているが、それだけではない」と説明している。
■小規模自治体では無償化の動きも
文部科学省の調査によると、公立小学校の給食費は年々上昇傾向にある。平均給食費は平成20年度の月額4019円から、30年度は4343円に上がった。中学校も同じ傾向で、保護者の負担が増え続けている。
一方で、給食費の無償化に取り組む自治体も。兵庫県相生市は23年度から年間約1億1千万円の予算を投じ、中学までの学校給食費無料化事業を行ってきた。それまでは人口が減少傾向だったが、2年後に増加に転じた。担当者は「月数千円でも、幼稚園から中学校まで12年間でみると、保護者にとっては非常に大きい負担。増税によって諸経費は上がるが、工夫しながら給食の質を守る」と話し、今後も継続する方針だ。
ただ、給食費の助成に取り組む自治体はそう多くはない。文科省が30年に公表した調査によると、全国1740自治体のうち、一部無償化は424自治体。完全無償化は82自治体(小学校のみ、中学校のみの自治体も含む)で、うち56自治体は人口1万人未満の小規模自治体だった。
■専門家「誤解与えるタイミング、無神経」
学校給食に詳しい大阪経済大学の藤澤宏樹教授によると、今回の増税を見越して、前倒しで値上げした自治体も多いという。「増税前から食材の価格が高騰しており、増税で諸経費も増える。値上げをしたい心情はわかる」と理解を示しつつも、「保護者に誤解を与えるこのタイミングでの値上げは無神経だ」と指摘する。
そもそも「学校給食法」では、給食にかかる費用のうち食材費は保護者負担、整備や運営にかかる費用は自治体負担と定めている。だが、保護者負担の食材費に水道光熱費や輸送費を含むか否かは、自治体によって判断が分かれるという。
藤澤教授は「憲法でも『義務教育は無償』と定めており、自治体の努力で保護者の負担を少しでも軽くすべきだ」と訴え、「韓国では9割を超える自治体で無償化を達成している。日本でも、都市部で率先して取り組んでもらいたい」と話している。