「アレルギー」は、身体の免疫機能が誤作動を起こしてしまう疾患です。免疫細胞は、ウイルスや細菌などの病原体が身体に侵入してくると、これを攻撃します。ところが、アレルギーは、害のない異物に免疫細胞が過剰反応して、鼻水やじんましん、かゆみや下痢、ひどい場合には、アナフィラキシーショックと呼ばれる、呼吸困難やショック状態などの症状を起こしてしまうのです。そして、いま流行中の「花粉症」も、アレルギー疾患のひとつです。今回は、アレルギー反応を起こすアレルゲンの種類と、アレルゲンがアレルギー反応をひき起こすプロセスを説明します。
アレルギーで死に至ることも! アナフィラキシーショックとは?
◆さまざまな物質がアレルゲンになり得る
アレルギー症状を引き起こす異物のことを、「アレルゲン」と呼びます。これらの物質に触れても、アレルギー反応を起こす人と起こさない人がいます。代表的なアレルゲンとして、次のようなものがあります。
●呼吸で吸い込むもの
草木の花粉、ハウスダスト、カビの胞子、ペットのフケなど
●体内に直接入るもの
注射で体内に入る薬(予防接種のワクチンなど)、ハチの毒など
●口から摂取するもの
食物アレルギーの三大原因は、卵、小麦、牛乳と言われています。そばやエビ・カニ、サバなどの青魚、ピーナッツのアレルギーもよく見られます。また、メロン、りんご、マンゴーやキウイなどが果物アレルゲンとしてよく知られています。
●皮膚に触れるもの
アクセサリーや歯科治療に使われる被せ物などの金属。ニッケル、コバルト、クロム、水銀などの金属がアレルゲンになりやすいとされています。そのほか、ペットの毛や羽、唾液などに触れてアレルギーを起こす人もいます。
◆花粉症の発症プロセス
アレルゲンがどのようにアレルギー反応を起こすかはさまざまですが、花粉症の場合を例に、そのプロセスを説明します。
1.鼻内部に侵入した花粉成分(タンパク質)を、免疫細胞が取込んで分解し、異物としての情報を得る
2.免疫細胞間で、その情報が伝達される
3.免疫細胞の一種が花粉に反応する「抗体」へと成長する
4.この抗体が血液に乗って全身を巡り、別の免疫細胞と結合する
5.再び侵入した花粉の成分が、免疫細胞表面の抗体に付く
6.免疫細胞が反応し、ヒスタミンなどの化学物質が分泌される
7.鼻水が出る、目がかゆくなるといった症状が出る
◆死に至ることもあるアナフィラキシーショック
免疫細胞が出すヒスタミンなどの化学物質の影響は、軽い場合は、鼻水やくしゃみなどで済みますが、重い場合には、体内のさまざまな血管の機能を失わせます。血圧が急激に下がり、脳に血液が回らず意識を失ったり、気道粘液が腫れて呼吸困難になったり、末梢血管が緩んで血圧か急低下して、ショック状態に陥ることがあります。これが「アナフィラキシーショック」で、生死に関わることもあります。花粉症でアナフィラキシーショックを起すケースは稀ですが、スズメバチの毒や食物アレルギーでは比較的容易に起こり得るで、気をつけてください。
井上愛子(いのうえ・あいこ)
保健師、株式会社とらうべ社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
Mocosuku編集部
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150303-00000005-mocosuku-hlth