2月に入り、今年も全国にスギ花粉が飛び交い始めた。花粉症に悩まされる人にとってはつらいシーズンだが、花粉症対策で注目されているのが花粉を持たない「無花粉スギ」の品種改良だ。
現在、無花粉スギ2品種の実用化に成功している、富山県農林水産総合技術センターの主任研究員・斎藤真己さんに、無花粉スギのメカニズムについてお話を伺った。
「無花粉スギは1992年に富山県の神社で偶然発見されたものです。現在、研究者の手によってこの無花粉スギをもとに、品種改良が進められています。このスギは、花粉を出す雄花の機能が失われていたものの、雌花は正常に機能していました。そこで、この無花粉スギに無花粉遺伝子をもつ優良なスギを掛け合わせてみたところ、50%の割合で無花粉スギを誕生させることに成功しました」
では、現在のところ植え替えはどの程度進んでいるのだろうか?
「現在、無花粉スギ品種として認定されているのは『はるよこい』『立山 森の輝き』(ともに富山)、『爽春』(茨城)、『スギ三重不稔(関西)1号』(三重)の4つです。そのうち、実際に苗木の出荷が始まっているのは、富山の2品種のみ。実際のところ、富山県内での植え替えだけで手一杯で、県外に出荷ができていないのが現状です。無花粉スギの開発は各地で進められていますが、優良なものでないと木材として使えないので、品種として認められるのは簡単ではありません」
斎藤さんが開発した「立山 森の輝き」も、20年がかりでようやく植樹できるスギとして出荷されるようになったとか。ちなみに、無花粉スギへの植え替えが進めば、花粉症はなくなるのだろうか?
「もちろん、完全に植え替えられれば、スギ花粉症はなくなります。でも、花粉をゼロにするのは極めて困難な話です。とはいえ、植え替えが進めば花粉の量は確実に減っていきます。例えば、1シーズンで1000個以下(1平方cmあたり)の飛散量まで抑えられることができれば、花粉症の発症者は減ると予想されています。それでも、いまの植え替えペースで換算すると、あと50年くらいはかかると思われます」
50年とはまだまだ先…、ちょっと残念。少しづつではあるが、神奈川を筆頭に都市近郊でも、その土地にあった優良なスギの改良が進んでいる。都市近郊のスギが植え替えられるだけでも、花粉の飛散量をかなり減らせるそうだ。希望を捨てず、無花粉スギの一刻も早い普及を待ちたいものです。
(末吉陽子/やじろべえ)
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20140210-00034546-r25