食物アレルギーがある場合、これまでは原因となる食べ物を口にしない「完全除去」がよいとされてきたが、研究が進み、対処法も新しくなっている。子どものケースで紹介。
1.食物アレルギーとは
食物アレルギーでは、特定の食べ物に含まれるたんぱく質が原因となり、アレルギー反応によるさまざまな症状が起こります。原因となる食べ物を食べてからおよそ2時間以内、多くは30分以内に症状が出ます。かゆみ、じんましん、湿疹などの皮膚症状がほとんどですが、声がれ・せきなどの呼吸器症状、目のかゆみ・充血、くしゃみ・鼻水などの粘膜症状、腹痛・下痢などの消化器症状が現れることもあります。重症の場合は、呼吸困難・意識障害などを起こすアナフィラキシーショックに陥ることもあります。
子どもが最もアレルギーを起こしやすい食べ物としては、鶏卵、牛乳、小麦がありますが、これらが原因の場合、3歳までに5割、6歳までに8~9割が自然に治ります。成長するにつれて、ピーナッツや、えび・かになどの甲殻類、果物、そばなどで起こる頻度も高まり、これらは治りにくいのが現状です。
2.“必要最小限の除去”が原則
かつては、食物アレルギーの原因になる食べ物は、徹底的な排除が推奨されていました。しかし、どのくらいの量を食べるとアレルギー反応が出るかは人によって違います。また、成長するにしたがってアレルギー反応が改善することもよくあります。そこで現在では、食物経口負荷試験という検査で“今現在どれだけ食べられるか”を医師の診断の下で正確に調べたうえでの、必要最小限の除去を原則としています。わずかでも食べられれば、子どもにとっても大きな喜びになり、食事に関わるストレスも軽減されます。
ただ、食物経口負荷試験は強いアレルギー反応を起こす危険性もあるため、熟練した専門医の下で慎重に行う必要があります。試験を受けられる医療機関は、食物アレルギー研究会のホームページに掲載されています。
3.食物成分が皮膚から入るのを防ぐ
アレルギーの原因となる食べ物の成分は、皮膚から入ることもあります。皮膚は通常、異物が体内に入らないように防御していますが、湿疹やアトピー性皮膚炎などで肌が荒れていると、食べ物の成分が直接皮膚から入ってアレルギーが起きやすくなることがあります。湿疹などはきちんと治療し、保湿液で皮膚を保護するなどして、清潔な肌を保ちましょう。特に、食べ物を口にし始める前(生後6か月間ほど)に肌から食べ物の成分が入ると、離乳食として口にし始めたときにアレルギー症状が出てしまう可能性があるので注意が必要です。
4.外食などに注意し 事故を防ぐ
食べられるものを食べていくことは大切ですが、食べてはいけないものや量を誤食しないようにすることも重要です。食品衛生法でアレルギー表示が決められているのは容器が包装されているもののみです。外食などの表示は必ずしも正確ではない場合もあり、重症の場合、基本的には外食は勧められません。
重症で、アナフィラキシーショックを起こす可能性のある子どもは、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を携帯する必要があります。誤食してアナフィラキシーショックが疑われる症状が出た場合、周囲の人は即刻エピペン®を打ちましょう。注射が必要なく打った場合でも、重い副作用が起こる心配はありません。その後、すぐに救急車を呼び、医療機関で処置を受けてください。
NHK「きょうの健康」2013年12月25日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20131225-h-001.html