「食」の信頼を取り戻す契機にしたい。
有名ホテルや百貨店で食品の虚偽表示が相次いだ問題で、政府が対応策をまとめた。
来年の通常国会に景品表示法の改正案を提出する。
改正案の柱は、監視体制の強化だ。農林水産省や経済産業省などに調査権限を付与する。出先機関を持たない消費者庁の調査だけでは限界があるからだ。
産地偽装を監視するため、全国に約1300人配置されている農水省の「食品表示Gメン」などを活用すれば、効率的なチェックが可能になろう。
調査・指示の権限しかない都道府県には、罰則を伴った措置命令を出せる権限を与える。命令に従わない業者には、3億円以下の罰金を科すことができる。
こうした体制強化が虚偽表示の抑止力となるよう期待したい。
改正案では、業者側にメニュー表示の責任者設置も義務づける。責任の所在を明確にすることで、意識改革を促そうとする狙いは適切と言える。
政府は、違反業者に金銭を支払わせる課徴金制度の導入も検討するという。だが、課徴金の算定は複雑で時間がかかりすぎる、との指摘がある。そこまで厳しい対応が必要なのかという声も少なくない。慎重な議論が求められる。
阪急阪神ホテルズ(大阪市)が運営するホテルで10月に発覚した虚偽表示は、百貨店や酒造業界など様々な業種に広がった。消費者庁によると、国に虚偽表示を届け出たのは307業者に上る。
消費者庁は、阪急阪神ホテルズなど3社に景表法違反で措置命令を出した。
虚偽表示が蔓延まんえんした要因は、業者側のモラルの欠如とともに、景表法の理解不足にある。
消費者庁は近く、虚偽表示の具体例などを示したガイドラインを作成する。関係省庁はこれを活用し、各業界に適正な表示のあり方を周知徹底することが必要だ。
消費者を裏切った業者は批判にさらされ、売り上げ減やブランドイメージの低下など、社会的な制裁を受ける。それが一連の虚偽表示問題の教訓と言えよう。
ホテルや百貨店業界では、メニュー表示のチェック体制強化や、景表法に関する講習会の開催など、表示の適正化に努める自主的な動きが出てきている。
年末年始には、食材購入や外食の機会が増える。各業者は、不適切な表示が残っていないか、改めて自己点検してもらいたい。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/medical/20131223-567-OYT1T01023.html