「もう年だからあまり食べなくていい」と、肉などのたんぱく質を控えたり、食事を抜いたりする高齢者は少なくない。だが気をつけないと、栄養不足(低栄養)になるおそれがある。専門家は「肉や卵、魚も野菜と一緒に、3食でバランスよく食べよう」と助言する。
肉も卵も食べよう
「『年寄りだからお父さんとサケを半分こ』ではダメ。栄養不足になってしまいますよ」。料理を作ったボランティアグループ「火曜ゆう友会」代表の松本タエ子さん(71)が、参加した高齢者たちに声をかけた。
この食事会は北区が2002年度から始めた。もともとは、高齢者が家の中に閉じこもりがちにならないよう、外出を促すのが狙いだった。ところが回を重ねるうちに「日々の食事をしっかり食べておらず、体力も落ちているお年寄りがいることがわかってきた」と区の担当者は話す。この日のメニューは、アスパラガスの牛肉巻きや魚のすり身入りのさつま揚げ、根菜の煮物や菜の花のゴマあえなど。
参加者の女性(77)は「一人暮らしなので、食事は簡単に済ませることが多い」と話す。野菜の煮物をまとめて作って数日続けて食べ、肉のおかずはほとんど作らないという。「今後は、食事会で食べた肉や魚の料理も作ってみたい」
高齢者の栄養管理に詳しい国立健康・栄養研究所の栄養ケア・マネジメント研究室長、高田和子さんによると、中年期には生活習慣病予防のため、食べ過ぎはよくないと指導されることが多い。その時の食事の注意点を高齢になっても守って肉や卵を控え続けている人に、しばしば栄養不足がみられるという。「疲れやすく風邪を引きやすい、体力や筋力が低下し身の回りのことができなくなるなど、様々な影響があります」と話す。
食事を抜くのも問題だ。東京都栄養士会理事で緑風荘病院(東京都東村山市)の管理栄養士、西村一弘さんは、「食事を抜くと、水分や塩分が不足し脱水状態になる場合がある。唾液が分泌しにくくなり、ますます食欲がなくなる悪循環に陥ってしまう」と指摘する。特に一人暮らしの男性高齢者は、弁当を昼と夜に分けて食べたり菓子をつまんで済ませたりと、食事が粗末になりやすいという。「2食で3食分の栄養を補うのは難しい。朝、昼、夜と食べていれば、栄養不足にはなりにくい」と話す。
ただ、中には市販の総菜に頼り、「過栄養」状態の高齢者もいるという。「多くの自治体で高齢男性向けの料理教室や高齢者の食事会を開いているので、参加してみては。バランスのいい食事がどんなものかがわかります」と西村さんは話す。
今の食べ方が適当なのかどうかは、体重の増減が目安になる、と高田さんはアドバイスする。「高齢者は大きく体重が減ると、再び増やすのが難しい。定期的に体重を量り、食事量もチェックしましょう」と話している。
(2013年4月27日 読売新聞)
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