少子化で増える認可外保育施設 高額保育料でも選ばれるワケ
月10万円以上の保育料がかかるケースも少なくない、高額な認可外保育施設が人気を集めている。認可保育所の定員超過にともない希望しても入所できない待機児童問題も背景だが、その一方で乳幼児期からの子供への教育熱の高まりなど、積極的に認可外を選ぶ保護者も多い。さまざまなサービスを展開し、少子化を逆手にビジネスチャンスを狙う認可外保育施設も増えている。
園児に対する保育士の割合や園庭の広さなど、児童福祉法にもとづき設置基準が細かく定められているのが認可保育所。こういった基準の外で運営されるのが認可外保育施設だ。厚生労働省によると、平成23年3月末の全国の認可外保育施設数は7579カ所で、前年より179増加した。入所児童総数も18万6107人で、6431人の増加だ。
少子化が叫ばれる中で、なぜ認可外保育施設が増えているのか。背景は、働く女性の増加などにより、都心部を中心に認可保育所の入所希望者が定員を上回る「待機児童問題」。平成23年10月1日時点の待機児童数は、全国で4万6620人。認可保育所に入れない子供の受け皿として、認可外保育所が必要とされている。
だが、その一方、あえて認可外保育施設を選ぶ保護者も増えている。規制にとらわれない自由度を生かし、カリキュラムや施設、給食などに特色を打ち出し、魅力的な運営をしている施設があるためだ。人気の高い認可外保育施設で近年多くみられるのが、英語教育を打ち出した施設だ。
キンダーキッズ(大阪市北区)が全国15校を展開する「キンダーキッズインターナショナル」では、外国人講師を中心に、英語で保育する。受け入れる年齢は0歳児からで、小さいころから英語に触れさせることでバイリンガルを育てたいという保護者などに人気。園児数はなんと2千人を超える。
学習塾の京進(京都市)の子会社が京都市中心部で運営する「HOPPA」では、学習塾のノウハウを生かした毎日の英語レッスンのほかに、少人数での知能教育がカリキュラムに組み込まれている。ホテルのシェフによるハンバーグなど、つくりたての給食といった特徴も。0歳児の保育料は週5日で11万5500円と高額だが、「入園希望の半年前から予約を入れる人もいる」(担当者)という人気ぶりだ。
世帯あたりの子供の数が減少する中、1人の子供にかける費用が増えていることも人気を後押しする。両親と両祖父母の計6人から経済的な援助を受けることを意味する「シックスポケット」という言葉は、少子化社会を反映している。
HOPPAの関隆彦社長は「当初、母親も大企業の総合職や医師などの専門職に就くような所得の高い共働き世帯を想定していたが、費用がかかっても乳幼児から質の高い教育を受けさせたいという、教育熱心な専業主婦家庭も半数くらいを占めている」と話す。
認可外施設を選ぶ理由は、保育料の仕組みにもあるようだ。認可保育所は市区町村が運営し、国の基準の中で、世帯収入によって段階的に保育料を定めている。このため同じ保育所に通っていても、保育料が異なる。たとえば兵庫県西宮市では、保育料は0円から最高で9万8800円。高所得者層にとっては「保育料で認可とさほど差がないのなら、教育に特色がある認可外に通わせる」選択をすることもあるのだ。
こうした環境は、ビジネスチャンスにもなっている。利用者の数によって保育料が決められる認可保育所とは違って、認可外施設は運営者が自由に定められる。高くても魅力がある取り組みやサービスを提供すれば、高収益につなげることも可能だ。
英語、給食のほかに、スポーツに力を入れる認可外施設も登場しており、少子化を逆手にとった保育所ビジネスは今後も拡大が見込まれる。保護者のさまざまなニーズに応えた保育の選択肢が増えるのはありがたい。乳幼児期から格差にさらされたり、国際教育に挑まなければならないが、この“ビジネスの裏”にあるのは子供の立派な成長を願う親の愛なのだ。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20130414503.html