東日本大震災から2年になります。震災では津波で甚大な被害が出ましたが、津波を引き起こす地震が起きた場合、市内はどれほどの被害を受けるのでしょうか。
信濃川流域の新潟市ではこれまで洪水への備えは進めてきましたが、津波への対策はこれから本格化します。専門家のシミュレーションを元に検証しました。
東日本大震災で発生した津波は、川をさかのぼり街を飲み込みました。震災後に発足した新潟県の津波対策検討委員会では、津波被害を未然に防ごうと検討が続いています。
河川工学が専門の新潟大学の安田浩保准教授は、信濃川流域の新潟市は、津波で大きな被害を受ける可能性があると指摘しています。安田准教授は県の想定に基づいて信濃川の河口に2.5メートルの津波が押し寄せてくるというシミュレーションを行いました。
その中では、川の両岸から一気にあふれだす津波が河口に到達してから20分で被害は海岸線から4キロの範囲まで広がります。
河口付近は、5分でおよそ3メートルの高さまで浸水。古町や新潟駅などの繁華街でも50センチから1メートルの津波が押し寄せることがわかりました。。
安田准教授は、場所によっては2メートルほどしかない信濃川の堤防の低さが弱点だと指摘します。洪水に悩まされてきた信濃川は、分水路を設け水を海に流すことで、街を守ってきました。
そのため、堤防は低いままで、川をさかのぼる津波には対応できないのです。今回のシミュレーションで、特に大きな被害が想定されたのが入舟地区です。
住宅の一階部分が全て浸水するとみられています。
自治会の役員たちは、津波が襲ってきた際どのように逃げればいいのか話し合いを続けてきました。高齢化が進み低層の木造住宅が密集し、避難はそう簡単ではないと不安を募らせています。
新潟市がこの地区で指定している津波避難ビルは5か所。
ビルから離れたお年寄りや避難に手助けが必要な要援護者は、間に合わないおそれがあります。
自主防災会長の明間博隆さんは、地区を回って避難場所を探しています。マンションのオーナーにいざというときには避難する住民を受け入れてほしいと要請します。しかし、多くの人を受け入れることは難しいとかオートロックで中に入ることすらできないなど、交渉は難航しています。
今回のシミュレーションでは、新潟市の中心市街地も50センチ程度浸水することがわかりました。この高さの津波でも侮ることはできません。50センチの津波でも足元をすくわれ転倒するおそれがあり、水深が浅くても、流れが速ければ命に関わるのです。
特に混乱が予想されるのは、地下街です。勢いを増した水が流れ込めば、逃げ場所を失う危険性があるからです。
多い時には1000人を超える利用客を、どう避難させるのか。
施設では、これまで、火災の避難訓練は行ってきましたが、津波は想定していませんでした。
避難の際は従業員が利用客を誘導することにしていますが、火元がわかる火災と異なりどこから水が流れ込むか予測できない津波では、誘導が難しく、金子さんは、利用客と従業員が逃げ遅れず避難するには、自分たちの力だけでは限界があります。
新潟大学の安田准教授は、一刻を争う津波対策ではハード対策だけでなく、個人の意識を高めるというソフト対策がより重要だと指摘しています。
新潟県では現在津波の浸水想定図の作成を急いでいます。
新潟市は、県の想定図の完成を待って市民の避難に役立つハザードマップを作成し、公表することにしています。
http://www3.nhk.or.jp/niigata/lnews/1035915951.html?t=1362758206048