実質的な大学全入時代を迎える中、障害のある学生が大学などに進学するケースが増えている。障害のある子どもたちの高等教育に関するニーズはまだまだ高いと予想され、大学などでの受け入れ態勢の整備は大きな課題である。文部科学省の検討会は、障害のある子どもたちが大学で学べるようにするためには、どのような支援が必要かを整理した報告書をまとめた。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が解説する。
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現在、障害者基本法などにより、障害を理由に差別されることなく学習機会が提供されるよう、「合理的配慮」をすることが義務付けられています。ただ、障害のある学生に提供すべき合理的配慮の範囲や課題が明確ではないため、障害者の受け入れがなかなか進まないのが実情です。このため文科省は専門家などによる検討会を設置し、大学などが取るべき「合理的配慮」の範囲などを検討することにしました。
検討会の報告書の中で注目されるのは、公平な入試の機会を提供することや、入学後は一般の学生と平等に参加できるよう保障することを打ち出している点です。大学などが提供する合理的配慮の適用範囲は、授業はもとより課外教育までを含めた広いものとしています。
具体的内容としては、大学入試での時間延長や別室受験、コミュニケーション能力に合わせた授業の配慮、専門知識を持った教職員を配置した担当部署の設置、施設のバリアフリー化などが例示されています。一方、合理的配慮には「体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という条件を付けています。
また報告書は、早急に取り組むべき課題として、情報不足によって進学を断念したり、学校選択の幅を狭められたりすることがないよう、障害のある学生の受け入れ実績、入試での配慮の内容、入学後の支援の内容を、各大学などが情報公開するよう強く求めています。
http://news.goo.ne.jp/article/benesse/life/education/benesse-6357.html