◇警察庁の指定製品にも
容疑者が虚偽の供述をした途端、針がグッと大きく振れる。映画やドラマでおなじみのポリグラフ(うそ発見器)だが、もちろん現実の世界でも使われている。県警捜査幹部は「もちろんポリグラフだけで真偽を判断することはないが、大事な参考資料の一つ」と話す。実はこのポリグラフを国内で初めて開発したのが、新潟市秋葉区の機械製造会社「竹井機器工業」だ。
竹井機器工業は1927年、竹井製作所として東京都品川区で創業し、戦中の強制疎開で現在の新潟市秋葉区に移転した。そして戦後、ポリグラフを開発したのが創業者の竹井七郎初代社長(故人)だった。
竹井社長は福島県出身。上京後、同社の前身となる竹井製作所を創業。機械いじりが趣味で、大学の研究室に出入りしていたという。そのうちに大学の研究者から「ポリグラフを開発できないか」と依頼を受けて、試行錯誤の上に現在の基となる形ができあがったという。
ポリグラフは、仕組み自体は単純だ。人は動揺したり緊張したりすると、指先にわずかながら汗をかく。被験者の指に電流を流すと、この汗で電気抵抗に微妙な違いが生じてくる。この「精神反射電流」を測定するのが、ポリグラフだ。竹井社長はポリグラフの改良を重ね、同社の製品は53年に警察庁鑑識課の指定製品となった。脈拍を測定したり、眼球の動きを読み取ったりする心理学研究機器の開発も進められた。
晩年の竹井社長を知る同社の川瀬修治さん(64)は「よく言えば現場主義、悪く言えばワンマンかな。素朴で昔かたぎの人だった」と話す。「従業員を家族のように思っていて、よく釣りや山登りに一緒にいった。事務所にいるときは、お茶を飲むときぐらいで、後はいつも工場を見て回っていた。技術試験も自分で試験官をしていたほど」と当時を振り返る。
同社の従業員数は約100人と、決して大企業ではない。その中で、心理学研究機器のトップメーカーの地位を築けたのは「一つは量産できない分野であること、もう一つは大学など研究機関との関係です」と同社営業部の堀幹雄さん(53)は語る。
同社は心理学研究機器だけでなく、ほとんどの商品が大学や病院、官公庁などの顧客から注文を受けた上で要望に沿った形で製品を作る。堀さんは「ほとんど外注せず、部品製造から組み立てまで自前でやります。製品も特殊なので、これでは大企業では採算ベースに乗せられない。加えて、大学など研究機関とのパイプがあること。これは初代社長の時代から変わりません」と強調する。
現在、同社は心理学研究機器だけでなく、体力測定機器やランニングマシン、運転適正検査機など、身体機能に関わるあらゆる分野の製品を製造している。同社の社訓は「人間の可能性を科学する」だ。「人間に関することは何でもやっていく」と堀さん。可能性はまだまだ広がっていきそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130104-00000099-mailo-l15
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