糖尿病と「寝たきり」の関係に着目している長野市国保大岡診療所所長の内場廉(うちば・きよし)医師は、生活習慣病を食の面で予防することについて、次のように話す。
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日本で、寝たきりになる原因の約半数が、脳梗塞、脳出血などの脳卒中です。血管がボロボロになることから起こる、動脈硬化性疾患ですが、その最大の危険因子が、糖尿病なんです。日本に糖尿病患者は、境界型(予備軍)も含めると2千万人もいます。全人口の6人に1人。この50年で激増しています。
日本人はインスリンの分泌が悪く、欧米人の半分から7割くらいの能力しかないといわれています。それなのに、この60年間で食べているものの組成が欧米人とほぼ同じになっちゃった。だから、糖尿病が急増しているんです。
寝たきりの予防には、なんといっても、糖尿病にかからない、進行させないことです。それには、とにかく食事です。食事の最初に野菜を食べることです。
あなたが、お昼にお店でラーメンを食べるとしましょう。つい一緒にギョーザを頼みたくなりませんか。男性ならご飯も付けたくなるかも。ラーメンだけだと足りなかったらどうしよう、と無意識に不安に思ってしまう。空腹感というのは、根源的には人間の生命の危機に対する恐怖感で、大切なんですが、現代はその空腹感を簡単に埋めることができますから、食べすぎてしまうんです。
そこで、ラーメンの前に野菜を食べるのです。注文の際、サラダやメンマを頼んで先に食べてもいいし、ラーメン屋さんに行く前にコンビニに寄って野菜ジュースを飲んでもいいでしょう。すると、あら不思議。ラーメン1杯で満腹になります。人間が満腹になるまでには、20~30分はかかります。ご飯が胃袋を通って小腸から血液に吸収されて満腹中枢に届くまでに時間がかかるのです。野菜が時間稼ぎをしてくれる、「タイムエフェクト」です。
※週刊朝日 2012年9月21日号
http://dot.asahi.com/ent/culture/2012092601805.html