ハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーショックに対して、初期治療までの時間が短縮できるドクターヘリが有用であることが、和歌山県立医科大救急集中治療部の田中真生医師らの調査・研究で分かった。ハチに刺された心肺停止症例では、受傷後10‐20分が心肺停止のピークであることから、田中医師は「山間部など救助隊の現場到着に時間を要する場合は、覚知時でのヘリ要請も積極的に啓蒙していく必要がある」としている。
田中医師らの研究グループは、和歌山県立医科大でドクターヘリの運用が始まった2003年から今年8月までの総出動件数の中から、特定の起因物質で生じる全身性のアレルギー反応であるアナフィラキシー症例を抽出。同症例は計36例あり、このうちハチによるものが30例を占めた。
すべてドクターヘリで対応したこの30例のうち22例で、血圧低下や失禁、呼吸困難、喘鳴、意識消失・障害といった症状が見られた。中には、現場所見で血圧測定・脈拍触知ができず、呼吸なしの事例もあったという。現場で行った処置は、アドレナリンの投与が25例、ステロイド点滴のみが2例、抗ヒスタミン剤投与のみが2例、輸液のみが1例で、CPR(心肺蘇生法)の実施も1例あった。
30例の予後では、HCU(ハイケアユニット)・一般病床入院が20例で最も多く、次いで帰宅が6例、他院への搬送が3例、ICU入院が1例の順だった。入院となった症例も翌日には軽快し、特に後遺症もなく退院したという。
現場から直近の救命センターまでの陸路搬送の推定時間は平均41分54秒だが、ドクターヘリ要請から初療開始までの平均時間は、その半分以下の16分30秒だった。田中医師は、「アドレナリンを投与しても心肺停止になる例もあり、山間部などでは積極的なドクターヘリの運用が望ましい。初期治療までの時間が短縮され、ドクターヘリは山間部でのアナフィラキシーへの対応に有用だ」と話している。
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