日用品に潜む危険 相次ぐ破裂、やけど、火災
先月、東京の地下鉄車両内で突然アルミ缶が破裂、14人が負傷する事故が起きた。業務用洗剤を飲料用の容器に詰め替えたことによる化学反応が原因だった。日々の暮らしに利便をもたらしている身の回りの製品に潜むさまざまな危険について、専門家に聞いた。【井田純】
◇洗剤は指定の容器に 携帯電池、過熱で発火も 湯たんぽ加熱法守って
地下鉄内での破裂事故の原因となったのは、レンジ周りの油汚れなどに使われる業務用洗剤。ホームセンターで販売されている。洗剤の強いアルカリ成分がアルミニウムと化学反応を起こし、ふたをした容器内に水素が充満し、破裂した。再現実験を行った独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)によると、同様のふた付きアルミ缶に400ミリリットルの業務用洗剤を入れたところ、約3時間半で破裂したという。NITEは「業務用に限らず、洗剤には強いアルカリ性・酸性のものがある。指定されたもの以外の容器に移すのは危険」と注意を呼び掛ける。
しかし、容器破裂の原因は洗剤に限らない。飲み残しのペットボトルが破裂し、ボトルの直撃を受けて骨折したり、天井の照明が割れたりする事故が起きている。国民生活センターによると、こうした事故が確認されるようになったのは01年からで、以来、少なくとも十数件の相談が寄せられている。
その犯人は微生物。同センター商品テスト部の担当者は「別の食品に含まれていた酵母や口の中の微生物などが混入し、飲料に含まれている糖分を分解して二酸化炭素が内部に充満、破裂に至ったと考えられる」と解説する。炭酸飲料のほか、果汁100%のジュースや牛乳入りのココアでも発生している。一度開けたペットボトルは、飲み終わるまで冷蔵庫に保管することが必要だ。
子どもからお年寄りまで、日々の暮らしに欠かせないアイテムになった携帯電話。先月、千葉市内で携帯電話用の外付け電池を充電中に出火、マンションの一室を全焼する火災が起きた。NITEには、昨年度までの5年間だけで557件の電池による事故が報告されている。乾電池やボタン電池によるものは比較的少なく、携帯電話やデジタルカメラ用の充電池など、特定の製品専用の電池の事故が約8割を占める。
本来なら充電が完了すれば「過充電防止機能」が働く。ところが「装置の不具合などが原因で防止機能が働かないと、電池が熱を持ち、電解液が気化して破裂したり、周囲の燃えやすいものに引火したりすることがあります」と、NITE製品安全センターの亀井信明さんは説明する。
携帯電話に充電器をつないだまま通話する人がいるが、これは間違った使い方だ。「充電しながら放電しているわけで、電池に過剰な負担がかかり、過熱状態になって電池自体の劣化を早めます」
劣化によって電池が膨らんできたら要注意。膨らんだ電池を本体に収めようとして押したりたたいたりするのは厳禁だ。絶縁体が損傷して内部でショートすると、火花の発生や破裂の危険性が高まる。
冬本番。こたつやストーブなど従来の暖房器具に加え、新しい技術を使った製品が増えている。同時に新たな注意も求められる。
「電気ストーブより早く暖まる」とうたわれるハロゲンヒーター。普及に伴って事故が目立つようになった。国民生活センターによると、発煙、火災などハロゲンヒーターの事故は09年度以降だけで213件。うちヒーターのガラス管の破裂事故は42件報告されている。
ヒーター管に微小なひびが生じると、加熱と冷却を繰り返すうちに管内部に酸素が入りこみ、ヒーター線の酸化や内壁の白濁が進む。この状態で使用を続けると、ヒーターが異常な高温となり、破裂に至る場合がある。同センターによる商品テストでも、長期使用でヒーター管に亀裂が入る機種があった。
NITEはリコール対象となっている27社のハロゲンヒーターのリストをホームページに掲載、該当製品の使用中止を呼び掛けている。国民生活センターの担当者は「形状的に倒れやすいものや、パラボラ型の製品では熱が局所的に集中しやすく、近づきすぎてやけどの被害もあった。電気だからガスや石油よりも安全という思い込みは危険です」と指摘する。
ここ数年、IHヒーターや電子レンジで加熱できる湯たんぽが広まっているが、手軽さの一方で注意が必要だ。湯たんぽの口金をしたままIHヒーターで加熱して破裂したり、噴き出したお湯でやけどを負ったりする事故が目立っている。また、ジェル状の保熱材を使った湯たんぽでは、指定された電子レンジの加熱時間を守らずに破裂する事故が増えている。食品調理を想定した「お任せモード」「オート加熱」で湯たんぽを温めると、結果的に過剰に高温になってしまう場合がある。国民生活センターの担当者は「粘着性が高く、さめにくい保熱材が皮膚にかかるとやけどがひどくなるケースがみられます。製品に表記された『1000ワットで2分』などの加熱時間を守って使うことが大事です」と話している。
生活を便利にしてくれる新製品の数々。だが、歴史が浅いだけに、思いもよらない事故が起こりうることを認識して使いたい。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20121122dde012100049000c.html