ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の予後が改善される一方で、長期療養上の課題としてHIV感染自体が引き起こす中枢神経障害(HAND)の問題が浮上している。国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センターの岡慎一センター長と、田沼順子専門外来医長は、13日に開かれたアボットジャパン主催のメディアセミナーで講演。HIV感染者の高齢化に伴い、HANDが増加する可能性があるなどとして、予防や治療法の確立といった対策の重要性を訴えた。
HANDは、認知機能障害や運動障害、行動異常といった症状が現れる疾患で、ウイルスの脳内への侵入や、ウイルスで引き起こされる体内の炎症による脳へのダメージが発症原因とみられているが、現時点では詳しい発症メカニズムは明らかになっていない。
「言葉/言語」「注意力/ワーキングメモリー」「抽象化/遂行機能」「記憶機能(学習と想起)」「情報処理速度」「運動機能」の6つの機能のうち、2つ以上に障害があり、認知障害に関連する他の疾患の可能性が除外された場合に、HANDと診断される。
またHANDは、日常生活の支障の程度に応じて3段階に分類されるが、岡、田沼両氏によると、HIV感染者に対する抗ウイルス療法の普及で重症の神経障害は減る一方、軽症が増加しているという。
講演で岡氏は、診断に当たっての機能の検査が1時間以上かかることを指摘。「簡単にできるものではない」と述べ、簡易診断法などの確立が必要とした。
また、HANDが原因で治療薬の服薬管理ができず、治療に支障が出るといった課題を指摘。田沼氏も、HANDによって患者の日常生活や就労にも大きな影響が出るとした。
さらに、日本国内のHANDへの取り組みについて田沼氏は、患者の療養型病院や介護老人保健施設への受け入れが進んでいない現状などを説明。患者が安心して治療やリハビリ、介護を受けられるための制度や施設が必要と訴えた。
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