岩手県の環境関連会社と盛岡信用金庫などが共同で2年前に設立したベンチャー企業「環境エネルギー普及」(本社・盛岡市)は再生可能エネルギーの普及に向け、設備設計や資金計画、保守点検まで総合的に手がけている。岩岡重樹社長(58)は「あらゆる自然エネルギーから最適なものを複合的に活用しながら、ネックだった多額の初期費用を極力抑えることで誰でも利用できるようにしたい」と話す。【金寿英】
−−会社設立のきっかけは?
09年末に盛岡信用金庫理事長から「金融機関が環境に対してどういう貢献ができるのか」と問いかけられました。私は長年、環境機器の開発などに携わりましたが、多額の設備導入費用がネックでした。たとえば設備を設置してもメンテナンスしなければ長持ちしませんが、これまでは保証期間も十分でなかったため、短期間で投資費用を回収するにはリスクが大きく、行政や企業も及び腰でした。しかし、ノウハウを持つ環境企業と金融機関が連携することでそれらの問題を克服できると思いました。
−−どのような仕組みで?
まず日照時間や建物の性能などからそれぞれの施設に、どの自然エネルギーが最適か調査し、初期費用は国庫補助や信金からの融資を組み合わせてまかないます。太陽光パネルは一戸建ての場合、定期的なメンテナンス費用も含め、定額料金月々1万円程度を10〜15年間支払っていただき融資を回収します。初期費用は0円。発電した電気は、設置世帯で消費し、残りは売電し、利益を得られます。
−−主な実績は?
岩手県紫波町で第三セクターが運営する温泉施設「ラ・フランス温泉館」に太陽熱温水器などを導入し、従来の重油使用量を半減させました。また個人向けとして同町住民を対象に太陽光発電などクリーンエネルギー0円設置サービスを10年11月から始めています。
−−震災後は会社を取り巻く環境も大きく変わったのでは?
震災前は話すら聞いてもらえないことが多かったのですが、震災後は県内外の自治体から設備導入の提案を多く頂きます。これまで消極的だった地元工務店も、今年7月から再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まったことで、ノウハウがなくても参入に意欲を示す業者が増えました。現場で指導しながら技術を習得してもらうプロジェクトも実施しています。
−−今後の課題は?
多くの提案を頂きますがそれをサポートする人材が不足しているため手が回らない状態です。また案件をこなすことも重要ですが、同時に再生可能エネルギーでここまでできるという実績を示す必要があると思っています。
http://mainichi.jp/feature/news/20121110ddlk15040086000c.html