野生復帰を目指すトキの生息環境とコメ作りを両立させる農法が新潟県・佐渡島で広がっている。
農薬を5割以上減らすことでトキの餌となる生物が多くすむ生態系を作ってきた。同時に、トキを育む豊かな自然で収穫されたコメであることをアピールしようと佐渡市のブランド米として売り出し、首都圏でも好評だ。
トキの研究で知られる永田尚志ひさし・新潟大准教授(鳥類生態学)は10日、インドで開催中の生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)の会場でこの取り組みを発表する。
稲刈りを終えたばかりの田んぼに10羽ほどトキが舞い降り、昆虫をついばむ。島でコメを作っている相田忠明さん(38)は「佐渡ではもう日常的な光景なんです。夕暮れ時に、ねぐらに帰る群れを見ると心が和みます」と言って頬を緩めた。
12ヘクタールの田んぼを所有する相田さんは1995年から5割以上の減農薬に努めてきた結果、田んぼにはトキの餌となるドジョウや昆虫が目に見えて増え、タヌキや野ネズミも姿を見せるようになった。そんな環境の中で収穫したコメは佐渡市の「朱鷺ときと暮らす郷さとづくり認証米」として首都圏にも出荷している。
今年4月には自然界で36年ぶりにトキのひなが誕生した。相田さんは「トキがシンボルになって、多くの人に佐渡の減農薬米が認知されれば」と期待する。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/region/20121009-567-OYT1T00791.html