~Vol.1より
どうやら弟は、遥か彼方を走っている走っている電車の音や振動を敏感に感じ取り、電車が来ることや種類まで当てているようだ。
また、音に関しては次のようなこともあった。
弟は、小学校4年生からピアノを習っている。その練習中のことである。右手と左手の全く違うリズムの、比較的難しい曲を弾きながら、口では弾いているいる曲とは全く別の歌を歌っていた。弾いている曲を口ずさみながら、ピアノを弾くことはよくあることだと思う。しかし、弟の場合はテンポも曲調も違う歌を歌っていた。これにはピアノの先生も
「今までたくさんの人を教えてきたが、こんな人は見たことがない。」
と驚いていた。
こんなことができるのは、弟の脳の中で、ピアノを弾くことと歌うことが、全く別のものとして捉えられているからである。脳の使い方が障がいのない人と違うのである。
また弟は、気圧や天気の変化も敏感に感じ取る。
ある冬の日のことである。その日は、雲一つない快晴で、暖かい日であった。朝の段階では弟も落ち着いており、普通に学校に行った。しかし、午後になると次第に落ち着きがなくなり、手に負えなくなってしまった。学校の先生もおかしいと思い、早退させることにした。母が車で迎えに行くと、弟は車を見つけるや否や、道路に飛び出して車に乗り込み、家に着くと毛布に包まり、ジッとして動かなくなってしまった。変だなと思っていると、さっきまでのいい天気が嘘のように空が曇り始め、一気に気温が下がり、嵐になった。
この時だけでなく、嵐や雷の前には弟は落ち着きがなくなる。これは、気圧の変化を敏感に感じ取り、不安や恐怖を感じるからである。普通では感じ取れないようなわずかな変化も、弟は感じ取るのである。
また、微弱な地震の電磁波も~ Vol.3へ続く