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恐怖のアイスコーヒー

昔、営業で外回りをしているときのことです。

特約店の営業マンと一緒に、工務店に商談に行きました。

工務店の社長は事務所の給湯スペースで魚を捌いていました。

「さっき(海から)戻って来たんだ」
クーラーボックスから魚を取出しながら、馴れた手つきで、包丁でおろしていきます。

「まぁ冷たいもんでも飲みながら待っててよ」

社長はガラスのコップ(ワンカップの空き瓶)に無造作に氷を入れました。

私と特約店の営業マンは、目が点になりました。
(…見ましたか…、確か社長…手を洗わずに氷を掴みましたよね…)
(…あの氷、クーラーボックスから出したよな…魚が入ってる…)
私は特約店の営業マンと顔を見合せながら、小声で話をしていました。

「ごめんなぁ、冷蔵庫に冷たいもんを切らしてて。でも氷ならなんぼでもあるから」

社長は奥の方から、常温の缶コーヒーと瓶のサイダーを持ってきました。

「どっちがいい?」

「いえ、私たちは結構ですから…どうか お構い無く…」
私がいい終わらないうちに、社長は缶コーヒーを傾け、例のワンカップに注ぎました。

「はい どうぞ アイスコーヒー」

社長はニコニコしながら、私たちの前に『特製・アイスコーヒー』を置きました。

よくみると、ワンカップのコップの縁に何かぬるっとしたものがついていました。

コーヒーの表面には脂が浮いています。

離れていても漂ってくる、生魚の臭い。

私たちは顔に脂汗を滲ませながら、一気に飲み干しました。

初めての味でした。

「ほぅ…そんなに喉が乾いてたのか…もう一杯やろうか?」
社長はまたまた、魚の入っているクーラーボックスの中に手を入れました。

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2010年08月18日 23:15に投稿されたエントリーのページです。

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