【 慎(しん) 独(どく) 】………大(だい)学(がく)
(訳…独(ひとり)を慎(つつし)むと訓読みする。人が見ていようがいまいが自らの行いを慎んで、良心に恥じる事のないようにすること)
~ 元文は【君子(くんし)は必(かなら)ず其(そ)の独(ひと)りを慎(つつし)む】となっています。立派な人物は、必ず一人になっても自らの行動を慎み、決して天や良心に恥じる行動はとらない、という意味です。また、老子も次のように言っています。
【天網恢恢(てんもうかいかい)疎(そ)にして漏(も)らさず】(天という網は、とてつもなく大きく粗い目であるが、決して悪は見逃さない)といいます。人が見ていないから、何をしても分からないと思っていても、天は必ず見ている。如何に一人になった時の行動が大切かを言っております。
この【独を慎む】という言葉は、自らを向上する為にも、また【信頼】を得るも失うもこの一字にあることを、心される事が大切です。
後漢の第四代和帝(わてい)の時代に、楊震(ようしん)という人が地方の長官に赴任した時、楊震の幼友達が夜中に大金を渡そうとしました。「誰も見ておりませんから、どうかお納め下さい。」と言ったところ、楊震(ようしん)は『天(てん)知(し)る、地(ち)知(し)る、我(われ)知(し)る、子(し)知(し)る』といい、誰が知らないと言えようか。天が知り、地が知り、私が知り、貴方が知っている。と言って諌めました。これは『楊震(ようしん)の四(し)知(ち)』として、知られています。
自らを律する人として尊敬されました。つぎに、【独(ひと)りを慎(つつし)む】と類似の故事があります。
1.【暗室(あんしつ)を欺(あざむ)かず】(暗い所でも身を慎む)……宋史
2.【屋漏(おくろう)に愧(は)じず】(家の奥で、人が見ていない所でも、恥かしい事はやらない)書経
これと反対の故事は【小人(しょうじん)閑居(かんきょ)して不善(ふぜん)をなす】…大学
(つまらない人間は暇だとロクな事をしない)~