skymaxです。
1983年5月、とても変わった彗星が発見されました。
赤外線観測衛星(IRAS)と二人のアマチュア天文家(日本人の荒貴氏とイギリス人のオルコック氏)が相次いで新彗星を発見したのです。
彗星自体はごく普通の小さな彗星だったのですが、地球に極めて接近する軌道を描いていたのです。
発見から地球に最接近するまで、わずか数日。
まだインターネットネットはもちろん、パソコン通信や電子メールもありませんでした。
この彗星の情報について、全国に散らばっているアマチュア天文家たちの間で、空前の電話連絡が飛びかいました。
私は彗星を観測対象とする天文同好会に所属していたので、比較的早く情報が入りました。早速、地元の星仲間に電話をかけまくりました。
この彗星は長い尾もなければ、明るい輝きもありませんでした。
まるで丸い雲のような彗星が夜空にぽっかりと見えるのです。
双眼鏡でしばらく見ていると、星々の間を移動しているのがわかりました。
彗星が地球に接近したために、見かけ上の動きが早くなってしまったのです。
しかも見かけ上の大きさもどんどん大きくなってしまいました。
しかも地球との位置関係が良かった為に、一晩中観測出来る彗星でした。
私は毎晩のように彗星を観測しては、天文同好会に報告を入れることを繰り返しました。
あまりに彗星が急激に地球に接近したために、一晩のうちに明るさが次第に増していく様子が観測出来きました。
彗星の観測のため、肉眼で明るさを測定するトレーニングを積んでいた私には絶好の腕試しの機会になりました。
この時の体験が、後に彗星観測の新しい技術を考案するきっかけになりました。
この彗星よりも明るい彗星、美しい彗星はいくつもありましたが、この彗星ほど若い私の心に深く影響を与えた彗星はありませんでした。
今、当時を振り返って驚くのは、アマチュア天文家の横の繋がりの深さです。
携帯もメールはもちろん、電話連絡網などなかった時代にわずか1日〜2日のうちに、日本中のアマチュア天文家に情報が伝わったのは驚きだと思います。
数年後、パソコン通信が普及し始めた頃、アマチュア天文家たちは早々とニフティ等に加入し、横の繋がりを深めていきました。
学校等の電話連絡網でも、親達相互横の繋がりの深さがあれば、十分に機能を果たすことが可能です。
実際にそのような学校もおありでしょう。
しかし残念ながら、横の繋がりは後からついてくるもの。新しい学年や学級にはまだないかもしれません。
インターネットも電子メールもこれだけ普及した現在、未だに電話が中心の『連絡網』。
もういい加減に見直す時期にきていると思います。
もちろん、個人情報の保護とセットでなければなりません。