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幸満(ゆきまろ)ちゃん事件から考える「親子間の距離」

笠井です。

幸満ちゃんを殺害した犯人・勝木容疑者は養護学校(現・特別支援学校)の卒業生だったことをネットのニュースで知った。
はっきりとは分からないが、おそらくは「軽度発達障害」に分類される人だったのだろう。

警察署に拘留されている容疑者は「お母さんに会いたい」と寂しさを漏らしているそうだ。

犯行前の彼は貸布団工場で働いていたが、作業をまったくしなくなったことを工場長から強い口調で注意されると無断欠勤するようになったそうだ。
会社側が勝木容疑者の携帯電話にかけてもつながらず、自宅を2度訪ねたが、誰も出なかった。
このため、会社側は東金特別支援学校と連絡を取って母親と話をしたところ、「長期休暇にしてほしい」と申し出があった。休む期間がはっきりしないため、母親に後日、「いつまでですか」と尋ねると、「ならいいです。うちの子はもう辞めさせてもらいます」と言ってきたという。

親子間の距離、殊に障がいを持った子とその母親の関係はどうあるべきなのか、改めて考えさせられる事件だ。

他人の家庭のことを例に挙げて論評するほど勉強しているわけではないので、自分の家庭についてお話ししてみる。

ウチの娘は知的障がいを持っている。
最近ではとてもおしゃべりになってきて、娘なりにペラペラと早口でおしゃべりしてくれてとても可愛い。
だが、一言一言はおそらく他人様が聞いたら何を言っているのか分からないであろうと思われる言葉ばかり。親の私でさえ、何を言っているのか分からない時がしょっちゅうだ。
「なんて言っているの?」と娘に聞き返していると、その様子を脇から見ていた妻が呆れ顔で「こう言っているのよ、なぜ分からないの?」と子どもの言葉を代弁してくるのだ。

客観的に見て、分からないのが当たり前の言語不明瞭さなのだから、
母親なら本来ここで、娘に正しい発音を教えるのが正しい接し方なのだと思うが、
あまりにも子どもとの距離が近付きすぎていて、それが判断できなくなってしまっているようだ。

「なぜ分からないの?」は、
私は子どものことなら何でも分かっているのに、あなたは何で分かってあげられないの?という意味なのだろう。

これは我が家での母親と障がいの子の距離感を示す一例だが、障がいの子を持つ家庭なら、程度の差こそあれおそらくどこの家庭でも同様の状況だろうと想像している。

家庭内では完璧な「母子密着」の関係ができあがってしまい、父親は家庭経済をささえるために外へ働きにでなければならないので、この母子で築いた密着関係からは必然的に疎外されます。

ある調査によれば、外国には日本ほど母子密着が進んだ国がないのだそうです。
諸外国の家族関係は夫婦単位が基本。
それに対して日本は親と子が基本。
子どもが生まれる前までは夫婦仲良しなのに、子どもが生まれた途端に母親の視線はすべて子どもにに注がれるようになる。
そして、その子が障がいなら…母親はいつしか自分を「子どもの完璧な寄り添い人」と思い込み、子どもの言いたいこと・考えていることをすべて先々に代弁するようになってしまう。

幸満ちゃん事件において報道から聞こえてくる容疑者の母の言動には「母子密着」状態を容易に想像させるものがある。

母子密着が子どもの成長に与える影響の大きさを私たちが認識するために、幸満ちゃんの尊い命が失われる必要はまったく無かった。
こんな悲しい出来事が二度と起こらないよう、私たちは今ここで改めて「親子の距離」について考えるべきなのではないだろうか。

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2008年12月12日 09:05に投稿されたエントリーのページです。

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