「命名」
私は、自分の名前を気に入っている。
学生の頃、クラスの女子に「望って名前だけはかっこいいよね」と微妙な褒められ方をされたこともあったが、本当にいい名前を付けてもらったと感謝している。
だからこそ子供には良い名前を付けてあげたいと思っていた。
子供の名前を考えている時に、母が一押しだった名前が「みかん」だった。
妻の実家からミカンが送られてくるからという安易な理由だった。
おいおい、それならば妻の実家が青森なら「りんごちゃん」下関出身なら「ふぐちゃん」なのかとさすがに言いたくもなった。
一人盛り上がっている母に「みかん」をあきらめさせるのに、私は「みかんだと最後が『ん』だからしりとり出来ないよ」と説得した。
それも意味不明だけど、母は大いに納得して、「みかん」の案は消えた。
一方、妻が押していた名前は「遥」だったのだが、「(はるか)遠くにお嫁に行きそうだから」という理由で、妻は「遥」の案を諦めた。
妻は自分が「美しい雪」という意味の名前のとおりに、暖かい熱海から雪国の長岡にお嫁に来た事をよくわかっているようだ。
そんなこんなで娘には「夢」と名付けた。
子供を授かるなんてまるで夢のようなことであること、夢を大切に生きて欲しいこと、そんな思いが込められている。
とある姓名判断によると、桑原夢という名前は、「男」では最強の名前であるという。
「女」である娘がどのような人生を歩むかはわからないが、今からおてんばになることは、覚悟している。