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蝉の羽化

星も見えない蒸し暑い夜、子供たちと蝉の羽化を見る為にすぐ近所の公園に行きました

「足元に気をつけてね、踏んでしまうといけないから」
午前零時すぎ、蝉の抜け殻がよく見掛ける大木の下を捜しました。

「うわぁ・・・蟻がいっぱい!」子供たちが驚いてさけびます。
前の夜にひっくり返ったまま動けなくなった幼虫に蟻がむらがっていました。
「この幼虫、まだ生きてるよ」息子が別の幼虫を見つけました。
その幼虫は仰向けにひっくり返って、必死に足を動かしてもがいていました。
おそらくこのままではこの幼虫も同じ運命を辿ることでしょう。
私は可愛そうになって幼虫をそっと手の中に入れて近くのエゾマツの大木の幹に付けて
やりました。
幼虫は元気良く木を登って行きました。

一安心してもう一度足元に目をやると…いました!もう一匹。
あまり動かないので、てっきり抜け殻とばかり思っていたのです。
その幼虫はあまり動かなくなり、間もなく幹の低いところに停止してしまいました。
そして、しきりに体を左右に揺すり始めたのです。
「羽化が始まるかもしれないね」
間もなく背中に一筋の裂目から白いものが姿を現しました。
羽化が始まったのです。
「食い入るように見つめる子供たち」
次第に背中の裂目が大きくなり、体が小刻に震えています。
私はカメラのシャッターを切りながら、羽化の一部始終を見守りました。
・・・その時です。
幼虫の左前脚が、木の幹から外れてしまったのです。
幼虫の体は大きくバランスを崩して横向きになってしまいました。
私がオロオロしている間に、幼虫はさらにバランスを崩して、地面に落下してしまいま
した。

地面には無数の蟻がうごめいています。
落下した幼虫の回りにたちまち蟻が群がりました。
「セミがアリに食べられちゃう」娘が叫びます。
私は近くの枯れ葉で蝉の体をすくいあげ、息を吹きかけて蟻を吹き飛ばしました。
そして蟻のいない石造りのベンチまで蝉の幼虫をそっと運びました。
殻が外れた蝉の幼虫は羽化直後の蛾にそっくりです。
しわくちゃの羽根がみるみるうちに大きく伸びて蝉らしくなって来ました。
ところが、幼虫は再び動き始めたのです。
そしてベンチから落下してしまいました。
私がすくいあげる、また落下するの繰り返し…。
「がんばれ、がんばれ!」子供たちが応援します。
その度に羽根はシワが増えているように見えました。
その時、もう一匹の幼虫の行方が気になり、さっきのエゾマツの根元まで戻りました。
ところがいるはずの場所に蝉の幼虫の姿が見えないのです。

まかさと思い、エゾマツの根元に目をやると…いました。
脚をバタバタさせながらもがいています。
もしかしたら、エゾマツは幼虫には登りにくいのかもしれません。私は向かいのミズキ
の大木に幼虫を移してあげました。
この木の枝には沢山の蝉の抜け殻が残っていたからです。
…が、よく見ると違っていました。それは抜け殻ではなく、生きた幼虫たちだったので
す。
既に数匹の羽化が進んでいました。
まだ羽根の薄い羽化直後の成虫が何匹もぶら下がっていたのです。
そこが本来の羽化する場所なのかもしれません。
ところが私が拾いあげた幼虫は何度やっても幹に登れないのです。あまり時間をかけす
ぎると明るくなってしまい危険です。
私はやむなく幼虫を先ほどのベンチに移してみました。
何度か移動しながら、ようやく羽化が始まりました。
先ほどの幼虫も羽化がほぼ終り、羽根を乾かすのみになりました。
私は安心して缶ビールを開けて飲み干しました。
しばらく自動車の中で仮眠してから、もう一度蝉たちの様子を見に行きました。
あたりはすっかり明るくなっていました。
例の二匹の羽化は無事に終りつつあるみたいでした。

ところが妙にスズメの鳴き声がうるさいのでその場所に行ってみました。
さっきのミズキでした。
先ほどまで沢山いた、羽化したばかりの成虫が一匹もいないのです。まだ白い羽根では
飛べないはずです。
若い成虫たちはほとんどスズメに食べられてしまったようです。
何年も土の中で過ごして、こうもあっさり食べられてしまったことに私は唖然としてし
まいました。
子供たちも呆然としていました。
「・・・セミって、毎晩大変なんだね」

子供たちにも忘れられない夜になったようです。

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コメント (2)

nomeshi:

蝉は捕まえてきて家の柱で孵化させて観察したことはありますが、公園に生で見いくってのも色々なドラマがあるものですね。
今度子どもをつれて行ってみます。

潤:

子供の頃、近所の神社の境内に、ラジオ体操に行ってた時のこと。大きな木がたくさんあって、その根元や木のあちこちに蝉の脱け殻がいっぱいありました。その木にはもの凄い数の蝉。驚きと共に、鳥肌が立つほど感動したのを覚えています。
夜中から観察したら、物語が出来たかも…しれませんね。

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2008年07月30日 06:25に投稿されたエントリーのページです。

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