顔のしわ取りなどのために「フィラー」と呼ばれる充塡(じゅうてん)剤を注射する美容医療を巡り、「痛みや傷が残った」との訴えが後を絶たない。大阪の弁護士有志でつくる「美容・エステ被害研究会」は「術後数年たって感染症やしこりなどの合併症を起こすケースもある」と警鐘を鳴らしている。【戸上文恵】
フィラーや脱毛、脂肪吸引など美容医療の契約や術後の健康被害に関する相談は、全国の消費生活センターに毎年約2000件寄せられている。国民生活センターは2016年、「しわ取り注射で1300万円を請求された」「注射の後、腫れがひかない」といった相談が60歳以上の女性から相次いでいると注意を呼びかけた。
フィラーは液状やジェル状で、コラーゲンやヒアルロン酸のように体に吸収される「吸収性」と、吸収されにくい「非吸収性」がある。メスを使わない「プチ整形」として人気があり、鼻や胸を大きくする施術にも使われる。しかし、非吸収性のフィラーを使った豊胸術で健康被害が相次いでいるとして、日本形成外科学会など4団体は今年4月、豊胸目的で使用するべきではないとする共同声明を発表した。
研究会は7月、被害実態を把握しようと、無料の電話相談を実施した。一日で10件近くの相談が寄せられ、「料金は高額なのに効果がなかった」「注射痕ができたり、赤く腫れたりした」といった訴えの他、「何を入れたのか分からない」と話す人もいたという。
専門医によると、非吸収フィラーは長期間体内にとどまり、組織にしみこんで一体化する。トラブルが起きた場合、周りの組織ごと取り除かなければならず、完全に元の状態に戻すことは難しいという。研究会の代表を務める西村陽子弁護士は「吸収性のフィラーも血管に詰まって失明したケースがある」と指摘。「施術を受ける前に、体に異物を入れるリスクについてよく考えてほしい」と話している。
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